第6話 初めてのバイク
磨いたバイクを眺めながら、待っていると畑仕事を終えた両親が収穫した野菜たちを載せて軽トラに乗って戻って来た。家の前で軽トラは止まり、茜は荷台の紐をほどいて、野菜の入ったプラケースを下ろす手伝いをした。
「どこに置けばいい?一回洗うよね?」
「外の水道の所に置いてくれるか?」
「わかった。任せて。」
茜は次々と水道の近くまで運んでいった。ズッシリと重い野菜たちを運び終わり、都会ではあまり味わえないであろうことが出来て、なんだか楽しくなっていた。野菜は土がまだ付いたままで土の香りもしていて、落ち着く香りでホッとしていた。
「茜、ちょっと、お母さんの事手伝ってあげてくれるか?その間に、バイクを車に載せておくからよ。」
「はーい!・・・お母さん、私、何をやればいい?」
「そうねぇ、私が水道で土を落とすから、茜は水気をタオルで拭いて、空の箱に詰めてってくれる?」
「おっけー!任せて!」
茜はお母さんの横で待機した。お母さんは毎日の事なので、慣れていてスピードも速い。茜は必死に頑張ったがなかなか追いつけないでいた。最終的にはお母さんもタオルを持ってきて、一緒に拭いてくれていた。
「よーし、終わり―!茜ちゃん、ありがとねー。」
「やっぱ、お母さんに追いつけないや。」
「毎日やってるからね。茜ちゃんも慣れたら早くなるわよ。ほら、お父さんの方も準備できたみたいよ。バイク屋さんに行くんでしょ?気を付けていってきなさいよ。」
「ありがとう!」
茜は軽トラに近づいていった。荷台にバイクが1台。紐でガチガチに固定されて、びくともしないぐらい動かないようになっていた。荷台には農作業用の機械を載せる為のスロープを常備してあり、そのスロープで頑張って載せたようだ。ピカピカの車体が太陽で輝いている。細かい傷はあるもののボディーは綺麗だった。
「バイク洗ってくれたんだな。大変だっただろう?」
「ううん、綺麗になっていくのが楽しかったよ。」
「ハハハ、そうか。それじゃ、バイク屋に向かうか。助手席で待っててくれるか?」
茜は助手席に乗り込んだ。お父さんは家に入り、お母さんに声を掛けているようだ。
「母さん、それじゃ、行ってくるから。」
「気を付けてね。」
そんな会話が家の中から聞こえてきた。茜はワクワクしながら出発を待っていた。修理して、直るのか不安はあったが、お父さんは何も言ってなかったし、きっと大丈夫、と茜は自分に言い聞かせていた。お父さんの準備も出来て、運転席に乗り込んできた。
「よし、行くぞ!ここからだと、30分ぐらいかな。眠たかったら、寝ててもいいぞ。」
「うん、ありがとう。大丈夫。」
茜はワクワクで眠気どころではなかった。道中はお父さんとこれからの事を話した。茜の思いも伝えていった。
「茜、昨日はあんな言い方してしまったけど、俺は、ただ、お前のことを心配しているだけなんだ。もし、本当にやりたいなら、やったらいいと思ってる。でも、約束してくれるか。無理だけは絶対にするな。茜の体は自分で守るしかないからな。」
「ありがとう。わかった。いつも支えてくれてありがとう。」
茜は小さく息を吸い込み、何度も頷いた。。一人っ子で両親の愛情をたっぷりもらってきて、沢山支えてくれていることが嬉しかった。これからは、両親に恩返しと共に、住人の皆さんの役に立っていくことを誓った。
話しをしながら走ってきたせいか、あっという間に時間は流れ、バイク屋へとやってきた。軽トラを駐車場に止め、お父さんは降りて、店の人と話している。店員がスロープを持ってきて、バイクの紐をほどき、下ろして修理場まで持っていった。
茜とお父さんは店内に入り、店員と話した。
「修理はどれくらいかかりそうかな?」
「そうですねぇ、あのバイク長年使ってなかったとおっしゃっていたので、バッテリー交換とキャブ清掃は必要かと思います。あとは簡単に検査を行ってからなので、最短で3日~7日は頂くことになると思います。だいぶ古い型式なので、走れる状態にはしておきますよ。」
「そうか、仕方ないな。じゃあ、頼むよ。それから、ヘルメットと手袋だけ新しいもの見せてもらうよ。」
茜はヘルメット売り場へ行った。色々なデザインがあり、値段もまちまちで何を選ぶべきなのか迷っていた。
「茜、最初はこのくらいの値段でも十分大丈夫だぞ。もし使ってみて、こだわりたいのがあれば、買い替えればいいからな。」
「15,000円…?結構ヘルメットって、高いんだね。」
沢山ある中で、お父さんが決めてくれた値段を主に見ていった。バイクの色との組み合わせを考えながら、選んでいった。茜はなんとなくシルバーが合うような気がした。
「おっ、シルバーかいいんじゃないか?それにするか?」
「うん!そうする!」
購入予定のヘルメットは店員さんに預けて次は手袋を見て回った。ヘルメットと同様に手袋も選んでいった。
「これに決めた!!」
「よし、わかった。じゃ、会計するからな。」
そういうと、お父さんは財布を手に取り、お金を出してくれた。
「悪いんだけど、バイクの修理が終わるまで、この2つ預かってくれないか?直ったら一緒に取りに来るからさ。」
「勿論大丈夫ですよ。こちらでお預かりしておきますね。娘さんが乗るんですね。楽しみですね。」
「ありがとうございます。」
お店にバイクを託し、自宅へと帰っていった。修理が終わるまでの間、日中は両親の手伝いに追われていたが、バイクの事だけは忘れることはなかった。
数日後、バイク屋から電話が入った。お父さんが対応してくれた。その日の夕方に取りに行く約束となり、2人でバイク屋へと足を運んだ。
「駒田さん、お待たせしました。やはりバッテリーがダメになっていたのと、キャブが詰まっていたので清掃しました。あと、オイル交換もさせてもらいました。細かく検査をしましたが、他は特に問題はなかったですね。」
「ありがとうございました。」
「料金が工賃含めて33,000円になります。」
「ありがとう。」
支払いを終えて、バイクを入口まで運んでもらった。茜は修理されたバイクを見つめていた。以前見た時には付いていなかったものがあった。
「茜、ビックリしたか?これはリアボックスって言ってな。収納が出来るようになってるんだ。これからの茜には必要かと思ってな。付けてもらったんだよ。」
「え!?いいの?これ高くないの?」
「いいんだよ。すべてのバイク用品は俺が費用持つからな。気にするな!ただ、バイクは危ない時もあるから気を付けて乗れよ!」
茜はリアボックスを見て、出前の人を思い出した。都会のピザ屋も後ろに収納ボックスが付いていたのを思い出し、またちょっとしたアイデアが湧いた。このバイクでも、小さな移動販売が出来るのではないかと頭に浮かんだ。
「ありがとう、お父さん。」
「ヘルメットと手袋もちゃんとしていけよ。エンジンかけてみろよ。」
「うん」
茜はバイクにまたがり、キーを回し、エンジンをかけた。
———ブロロロロロロ・・・ブンブンブンブン・・・———
エンジンがかかった。お尻にも響く振動が心も動かしていた。
楽しみで、待ちに待ったバイク。自分の運転で自宅へと帰る。もう、ウキウキした心を止めることは出来なかった。早く帰りたかった。
「無事に帰れそうだな。運転できそうか?最初はゆっくりでいいからな。」
「うん、安全運転で行くよ。楽しみ!」
「じゃ、そろそろ帰るか。気を付けてな。」
お店を後にして、安全運転でバイクに乗った。不慣れな茜だが、道中は車の数も少ない。田舎町では運転の練習が向いていると考える余裕も出てきていた。のんびりと走るバイクは夕日で輝いて見えた。
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