第3話 日本到着

俺の名はモーブ・キモーだ。少年のころ兄が日本から持って帰ってきた同人誌を見て以来、日本文化に憧れていた。いまは遂に願いを叶え、飛行機でアメリカから日本へと向かっている。


なん…だが…誰だあの美女。金髪ウェーブの美女が俺の前の席に座っていた。マジでモデル級、いや、モデルよりも美人なのだが、見たことのない顔だ。


服はめっちゃダサいし男物だけど。


めっちゃゲームやってる。これでもかってくらいの指さばきだ。そう!俺は様々なゲームをやっている!格ゲー、FPS、RPG、etcetc…そしてその俺が断言する。あいつ、やべー。彼女がやっているのは格ゲー界トップ人気を誇る、ファイターズ・スピリッツ。


様々なキャラクターと細かいコマンド技があり、一時期はまっていたゲームだ。だが、あれはヤバイ。見たことがないくらい凄まじい指の動き、そして相手の動きを読む天才的な何か。その無双姿、まさにかつて一度だけ見た伝説の各ゲーマー、ピッグ・ファイターに勝るとも劣らず!


…ふっ、いいものを見た。日本についたらゲーセンに行こう。もう一回ゲーセンの格ゲーで遊ぶんだ。かつて兄さんと遊んだあのゲームを。


―――――


「~~~!!!」


飛行機の中で頭を搔きむしる。てか随分美人になったよな、俺。シャンプーは特に変えたわけでもないのにいい匂いがするし。


ファイターズ・スピリットをやっているのだが、相手が弱すぎてつまらない。最近はこのゲームもまあまあ過疎ってきたしな。レイは何かの準備で遊べないみたいだし、ほかの二人も日本に行く準備で忙しいようだ。


『Attention please―――


飛行機のアナウンス。そろそろ日本に着くようだ。飛行機の台の上に出した格ゲーセット一式をバッグに仕舞い、飛行機を降りる準備をする。


ゲートを通り、待ち合わせ場所である空港の売店の近くのモニュメントへと向かう。荷物はあまり無い。賃貸物件を解約して少しゲーム機材を持ってきただけだ。


最近はみんな同時翻訳機能の付いた電子機器を常備しているので、生活でも特に困ることはないだろう。流石は2040年。


「おっ!よく来たな、バート!」


モニュメントの隣に立つ黒髪美少女。服はいかにも清楚そうな白いシャツに黒いスカート。それが周りを通り過ぎる人々の視線を集めている。中身は25歳のいい歳した大人なのだが…まあそれはいい。


「やあ、こうして会うのは久しぶりだよな、レイ」

「おう!」


怜がにぱっと笑う。


「それで?詳しい話も聞いてないんだが、これからどうするんだ?」

「ああ、詳しい話は全員が来てからな。それにしてもバート、ホントに別人だな。あのヒキニート時代のデブさとはずいぶん違う。どうせなら太んないでくれよ」

「ほっとけ!」


ニマニマと笑いながらこちらを見てくる。いい迷惑だ。

売店でおやつを買ったりしながら待っていると、フェイとロディの姿が見えた。

フェイが勢いよく駆け寄ってくる。


「おーい、レイ!バート!ひっさしぶりぃ!元気?ボクは元気だよぉ!」

「聞いてもないことをごちゃごちゃ喋るなフェイ!俺ぁ疲れてるんだよ!」


いやいや、疲れてないだろお前。さすがにクズいぞ。さっきまで俺とスナック買ってたくせに。


「はぁ、はぁ、待ってくれよフェイ…この体になってから上手く走れないんだよ…」


ロディが息切れしながら追いついてくる。その服装は、短パンにオーバーサイズのパーカーという服装だったのだが…


「おいロディ…お前服無いのかよ…俺でももう少しマシなもん着るぞ?スナックですぐ汚れるけど…」

バートがさげすんだ目で見つめる。


「仕方ないだろ!?こんなちびになったんだぞ!?これじゃあ服屋にも行けない!かといって前の服も着れない!どうしろっていうんだい!」

頬を赤らめてパーカーの裾を抑えるロディ。


「銀髪長髪ロリオーバーサイズパーカーか…おまけに赤面…イイネ!」

隣でうんうんと頷く怜。


「君は本当に変態だな!?というかそんな服どこで買ったんだい!?通販!?」

「え?普通に店に買いに行ったが?」

怜がさも当たり前かのように言う。いや、それが普通だ。残りが臆病すぎるだけだ、多分。


「君はメンタル強いなぁ…」

「ボクもそんな勇気はないな…」

フェイは若干引いている。


「んで、突っ込まないようにしてたんだがな?なんかの間違いかと思ってたんだがな?なんでフェイはチャイナドレスなんだ?それしか無いとかいうなよ?一番体格変わってないのお前だからな?」

怜がついに突っ込む。


フェイの服装は赤いチャイナドレス。周りの男たちの視線を一番かき集めている。


「え?日本で中国人の正装ってこれじゃないの?」

キョトンとするフェイ。


「違う…さっさと着替えてこい…」

「えぇー」

「ほら、行った行った!トイレででも着替えてこい!」

「はぁーい」


トイレへと走っていくフェイ。彼女は迷いなく女子トイレへと入っていった。


「…勇気あるなアイツ」

「…まだ俺もあの勇気はなかったぞ」

「君たちってホントに陰キャだよね…まあそのうちあそこに入る覚悟は決めときなよ。男子トイレ使うわけにはいかないんだし」

「ぬぅ…」

怜が迷いを見せる。流石にそれはどうかと思っているようだ。


フェイがズボンとシャツに着替えて戻ってくる。

「待たせたねー!さ、行こっか!」


四人は大勢の注目を集めながら空港を出て、駐車場へと向かう。怜の軽自動車へと乗り込み、都内の目的地へと向かう。


「…それで?いい加減に教えてくれよ。俺はゲームできりゃどこでも良いからさ、どうするんだ?Vtuberになるって話も詳しく分からないしな」

「ホントにね。僕たち家まで捨ててきたんだからさー」

「まあ停滞していた状況をひっくり返すには確かに良い提案だったかもしれないけどな」


「ふふん!迷える子羊であるお前たちに教えてやろう!俺たちが始めるのはルームシェアだ!そしてVtuberについては何も考えてない!」

「はぁー、ルームシェアか」

怜がハンドルを握りながら自慢げな顔で言い切る。


「なあ…考えてないってどう言うことだい?」

「ん?そのままの意味だぞ?Vtuberについてはこれからみんなで話し合うんだ」

「それは日本に来る前にやるべきことだろう…?」

若干絶望しているロディ。


「まあスムーズにゲームができるようになったんだから良いじゃねえか」

「あっ、レイ、そのシェアルームって広いの?」

「ん?まあまあ広いと思うけど?」

「そういえばレースマシンがこれから届く予定だったなー、ってぇ…」

「おい、待て待て待て…あんなもん置いたらリビングルームほぼ消滅するんだが?フェイ、絶対お前の部屋に置けよ?お前のベッド撤去したらギリギリ入ると思うから」

「ボクにどこで寝ろと…?」

怜が焦った顔をしてフェイに残酷な事を言い渡す。


「レイ、流石にそれは…」

ロディが怜を止める。


「いやいやお前フェイ、レースマシンの椅子の方がベッドより寝れるとか言ってたじゃねーか」

「あっ、確かにそうだねー。起きたらすぐできるしね」

寝れるのかよおい。寝れるのかよゲーム廃人。


一時間ほど走り、怜が車を止める。

「おし、着いたぞ」


そこは立派なマンションだった。

「ここの家賃、みんなで割り勘って事で良いよな?」

「「「そうなの???」」」


当たり前だよ。

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