第6話
ノヴァ・ベースのラウンジで、俺はコスモ・ロブスターの殻を片付けながら、昨日の勝利を振り返っていた。初の正式ミッションを完璧にこなし、プラチナ級食材で胃袋も心も満たされた。あの甘くとろけるロブスターの味わいは、今でも舌に残っている。
だが、シルヴィアが解析した異常信号の件が、頭の片隅で引っかかっていた。海賊の背後に何かある——それが、ただのゲーム内イベントなのか、それとももっと深いものなのか。
そんな朝、ブリッジに緊急アラートが鳴り響いた。
「マスター、近隣宙域で小規模海賊艦隊を確認。数は六隻、すべて軽武装の高速艇です。どうやら、昨日のレッドファングの残党らしい」
シルヴィアの報告に、俺は即座に立ち上がった。
「追跡する。〈エターナル・ノヴァ〉、出撃準備」
リリィがメカニックルームから駆けつける。
「マスター! 高速追跡用にスラスターをチューニングしておきました! 絶対に逃がしませんよ!」
ガストンが厨房から声をかけた。
「捕まえたら、またいい食材落とすかもな! がんばれよ、マスター!」
艦はドックを離れ、ワープで海賊の最後の座標へジャンプした。
到着すると、六隻の小型艇が散開しながら逃走中だ。赤と黒の塗装が、昨日のレッドファングと同じマーク。確かに残党だ。
「シルヴィア、敵の航路予測を」
「了解。ワープジャンプの痕跡から、次の隠れ家は小惑星帯『アステロイド・ベルト9』と推定されます」
俺は神級戦術眼を発動させた。敵の動きが完全に読める。彼らはジグザグに逃げながら、ミサイルで牽制してくるつもりだ。
「ステルスモードで接近。距離五万キロで捕捉」
〈エターナル・ノヴァ〉が影のように滑り込み、敵艦隊の後方を取る。敵は気づいていない。
「副砲でエンジン部を狙え。一隻ずつ無力化だ」
最初の標的は先頭の艇。青い光線が静かに伸び、エンジンを直撃。爆発せず、ただ推進力が失われ、慣性で漂い始める。
敵がようやく気づき、慌てて散開。通信が乱れ飛ぶ。
「で、でかい艦がいる! スターダストの奴らか!?」
「逃げろ! 小惑星帯まで持ちこたえろ!」
だが、遅い。俺は次々と命令を下す。
「量子魚雷、二連装。目標二番艇と三番艇」
魚雷が光跡を引いて追いかけ、命中。シールドが弾け、艦体が半壊する。
残る四隻が小惑星帯に突入しようとする。岩塊が密集する危険宙域だ。普通の艦なら接近を躊躇するが、〈エターナル・ノヴァ〉は違う。
「リリィ、ナビゲーションを頼む。俺が操艦する」
「はい! 最適ルート計算完了!」
俺は直接艦船支配スキルで操縦桿を握った感覚を味わう。艦体が俺の体の一部のように動く。小惑星の隙間を縫うように滑り込み、敵を追い詰める。
一隻が岩に衝突しそうになるのを、俺は副砲で先に仕留めた。爆炎が小惑星を照らす。
残り三隻が必死にミサイルをばらまく。だが、点防御システムがすべて迎撃。火花が宇宙に散るだけだ。
「主砲、広範囲チャージ。残敵一掃」
艦首が輝き、扇状のプラズマ波を放つ。三隻が同時にシールドを失い、航行不能に。
追跡開始から三十分。六隻すべてを無力化した。
「シルヴィア、降伏勧告を」
通信で俺の声が響く。
「抵抗をやめろ。生かしてやる」
敵から白旗信号。降伏だ。
接舷後、俺たちは敵艦に乗り込み、艦長を拘束した。ガストンが用意した簡易食事で脅しを効かせる作戦だ。
敵艦長は震えながら口を開いた。
「わ、わかった……話すよ。最近、謎の通信が来ててな。『新興ギルドを潰せ』って。報酬は莫大だったんだ」
シルヴィアが鋭く問う。
「その通信の送信元は?」
「わからない……暗号化されてて。でも、コードネームは『シャドウ・オペレーター』って……」
また、異常信号だ。
戦利品として、敵艦から新鮮な異星魚介類を大量に確保。ガストンが目を輝かせた。
帰投後のラウンジで、祝勝会が始まった。
今日のメインは、戦利品の「アステロイド・キングクラブ」。巨大な蟹で、甲幅一メートルはある。ガストンが蒸し上げ、バターソテーに仕立てた。
甲羅を開くと、熱い蒸気と共に甘い香りが爆発。身は雪のように白く、詰まった蟹味噌が黄金色に輝く。
ハサミで身をほぐし、一口。
……極上だ。
繊細な甘みが口の中で溶け、濃厚な蟹味噌が後を追う。バターの香りが絡み、食感はプリプリと弾力がありながら、舌で簡単にほぐれる。
付け合わせの野菜ソテーと一緒に食べると、蟹の旨味が野菜の甘みを引き立て、完璧なハーモニー。
リリィが夢中でハサミを動かす。
「これ、人生で一番おいしい蟹かも……!」
シルヴィアも普段より多く食べている。
「勝利の味……ですね」
俺は仲間たちを見て、満足した。この日常が、守る価値がある。
だが、敵艦長の証言が頭をよぎる。
シャドウ・オペレーター。
この陰謀は、確実に俺たちを狙っている。
次なる敵は、ただの海賊じゃないかもしれない。
そして、その手がかりが、そろそろ新メンバーの登場を呼ぶ予感がした。
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