第5話

ノヴァ・ベースのラウンジで、俺は展望窓から広がる星海を眺めていた。スターダスト・ラムのローストが胃袋に残る満足感を与え、仲間たちとの会話が心地よい余韻を残している。本部構築が一段落し、ようやく落ち着いた日常が始まるかと思った矢先だった。


ブリッジからシルヴィアの通信が入った。

「マスター、銀河連邦傭兵ギルド本部より、正式なミッション指令が届きました。優先度が高く、報酬も破格です」


俺はすぐにブリッジへ向かった。リリィとガストンも後を追うように集まってくる。


メインスクリーンにミッション内容が表示された。


【ミッションランク:A】

【内容:交易ルート「セクター7」を脅かす海賊団「レッドファング」の掃討】

【敵規模:中型艦1隻、小型艦12隻、戦闘機数十機】

【報酬:名声値10,000、クレジット5000万、希少食材セット(プラチナ級)】

【特記事項:民間輸送船団の護衛を兼ねる。失敗した場合、連邦評価低下】


俺は口元に笑みを浮かべた。

「初の正式ミッションか。ちょうどいい腕試しだな」


リリィが拳を握る。

「やりますよ、マスター! 新しく強化したシールドと副砲、絶対に活躍します!」


ガストンがエプロンを叩いた。

「報酬の希少食材、楽しみだぜ! プラチナ級って聞いたら、料理長の血が騒ぐな!」


シルヴィアは冷静に戦略を提示した。

「敵旗艦は旧型巡洋艦ですが、戦闘機の数が脅威です。マスターの神級戦術眼を活かし、先制で母艦を無力化することを提案します」


俺は頷き、即座に出撃準備を命じた。

「〈エターナル・ノヴァ〉、全システム起動。ワープでセクター7へ直行だ」


艦が低く唸りを上げ、星々が流れるワープ空間へ突入した。


セクター7に到着すると、すでに戦闘の気配が漂っていた。民間輸送船団が円陣を組み、海賊の小型艦が周囲をうろついている。遠くに赤い塗装の旗艦「レッドファング」が、威圧的に構えていた。


敵側から通信が飛び込んできた。

「新参の傭兵か? ここは俺たちの狩場だ。引き返せば見逃してやるぜ!」


俺は通信を返さず、代わりにシルヴィアに合図した。

「ステルスモード解除。全砲門開放」


〈エターナル・ノヴァ〉の姿が空間に顕現し、敵艦隊が慌てて反応する。


「主砲チャージ開始。目標は敵旗艦のエンジン部」


青白い光が艦首に収束。神級戦術眼で、敵のシールド弱点を正確に捉える。


「発射!」


プラズマの奔流が虚空を切り裂き、敵旗艦の後部を直撃。シールドが一瞬で崩壊し、エンジンが爆発。旗艦が航行不能に陥る。


敵戦闘機が雪崩れ込んでくる。数十機のファイターが、ミサイルとレーザーを乱射しながら迫る。


「対空副砲、全開! リリィ、点防御システムをオーバードライブで!」


艦体から無数の光線が放射され、戦闘機を次々と撃墜。爆炎が宇宙に広がる。リリィの強化が効いている。迎撃率はほぼ100%だ。


残った小型艦が逃げ惑うが、俺は量子魚雷を一斉発射。追尾機能で逃げる敵を確実に仕留める。


戦闘開始から二十分。敵艦隊は全滅した。


輸送船団から感謝の通信が入る。

「スターダスト・マーセナリーズさん! 本当にありがとうございます!」


シルヴィアが報告した。

「戦闘終了。損害ゼロ。民間船団の安全確保」


俺はブリッジで深く息を吐いた。

「よくやった、みんな」


ミッション完了の通知と共に、報酬が転送された。

特に目を引くのは、希少食材セット。プラチナ級「コスモ・ロブスター」「ギャラクティック・キャビア」「ネビュラ・トリュフ」など、聞いただけでよだれが出そうなラインナップだ。


帰投後、ラウンジでガストンが早速料理を開始した。


メインはコスモ・ロブスターのグリル。巨大な甲殻を丁寧に開き、バターと宇宙レモンを塗って高温で焼く。香ばしい匂いが立ち上り、甲殻の中の身がぷりぷりと膨らむ。


焼き上がったロブスターをテーブルに運ぶと、透明感のある白身が輝いている。ナイフで切ると、熱い蒸気が立ち上り、甘い海の香りが爆発する。


一口かじる。


……これは、言葉にならない。


弾力のある身が歯でほぐれ、濃厚な甘みと旨味が口いっぱいに広がる。バターのコクとレモンの酸味が絶妙に絡み、後味は爽やか。付け合わせのキャビアを添えると、プチプチとした食感と塩味が加わり、さらに贅沢な味わいに昇華する。


ネビュラ・トリュフを削ったサラダも絶品。土のような深い香りが、野菜の新鮮さを引き立てる。


シルヴィアが静かにフォークを置いた。

「これほどの料理は……マスター、この勝利を祝って、最高の夜です」


リリィはもう二匹目を剥き始めている。

「ガストンさん、結婚してください!」


ガストンが大笑いした。

「リリィちゃん、俺はマスターの料理長だぜ! でも、毎日こんな食材が手に入るなら、死んでも悔いないな!」


俺はワインを傾けながら、仲間たちの笑顔を見た。このミッションで、俺たちの絆はさらに強くなった。


だが、食事が終わる頃、シルヴィアが小さな声で言った。


「マスター、敵旗艦のブラックボックスを解析しました。そこに、例の異常信号と同じ暗号が記録されていました」


俺はグラスを置いた。

「……つまり、海賊の背後に何かいるってことか」


「はい。まだ断定はできませんが……このゲーム世界に、外部からの干渉が確実に存在します」


リリィが不安げに俺を見る。ガストンも真剣な顔だ。


俺はゆっくりと立ち上がった。


「わかった。次のミッションで、もっと情報を集めよう。この日常を守るためにも、真相を突き止める」


仲間たちが頷く。


初のミッションは成功に終わった。


だが、同時に、大きな陰謀の幕開けでもあった。


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