第4話
佐藤太郎は、翌朝早くに目を覚ました。
昨日の出来事が夢ではなかったことを確認するため、すぐにスマホを手に取る。神託アプリはまだそこにあり、ステータス画面が昨日のまま表示されている。
【レベル28】
【スキルポイント:4(未使用)】
アプリのメニューに、新しく「スキルツリー」の項目が点灯していた。チュートリアル進行度が50%を超えたらしい。
太郎はベッドに座ったまま、スキルツリーを開いた。
画面に広がったのは、巨大な樹形図だった。中央に「無限レベルアップ」のアイコンがあり、そこから無数の枝が伸びている。最初に開放されているのは、基本的な強化系スキル群だ。
・強化身体(コスト1):筋力・耐久・敏捷を恒常的に10%上昇
・武器適性(コスト1):剣・槍・弓などの扱いが上達
・危険感知(コスト1):敵の攻撃を事前に察知
・魔力基礎(コスト2):MP上限増加と初級魔法使用可能
太郎は迷わず「強化身体」を選択した。スキルポイントが1消費され、体に温かな流れが広がる。
立ち上がってみると、昨日よりもさらに体が軽い。筋肉が引き締まり、部屋の中を軽く走ってみても息が上がらない。
「これ……ヤバいな」
残りのスキルポイントは3。今日はもっと稼いで、別のスキルも取りたい。
急いで朝食を済ませ、いつもの装備を整えて家を出た。今日は平日だが、有給休暇を取っていた。社畜生活など、もうどうでもよくなっている。
浅草低層ダンジョンに着いたのは、開場直後の午前九時。平日は人が少なく、ほとんど貸し切り状態だ。
太郎は配信をスタートさせた。
「こんばんは……じゃなくて、おはようございます。たらおです。今日は平日ですが、有給取って来ちゃいました。昨日調子良かったんで、もっと奥まで挑戦します」
視聴者数は開始直後で3人。昨日の動画が少し回っているのか、コメントが早速入る。
『またチート疑惑www』
『加工上手いな』
太郎は苦笑しながら、ダンジョン内へ入った。
昨日攻略したスライム・ゴブリンエリアは、もはや物足りない。アプリのマップ機能で確認すると、このダンジョンの最深部には中ボス級のモンスターがいるらしい。
迷わず奥へ進む。
通路を抜けると、広い部屋に出た。そこに待ち構えていたのは、狼型のモンスター——ダンジョンウルフ三匹。低層ダンジョンでは最強クラスの敵で、F級探索者ではパーティーを組まないと勝てない相手だ。
ウルフが低く唸り、牙を剥いて襲いかかる。
太郎は短剣を構え、冷静に距離を取った。新しく取得した「強化身体」の効果で、動きが段違いだ。
先頭のウルフが跳躍。太郎は横にステップし、剣を振り下ろす。刃が首筋を捉え、一撃で致命傷を与える。血が噴き出し、ウルフが倒れる。
残り二匹が同時に側面から攻撃。だが、体が自然に反応する。後ろに回り込み、一匹の背中を斬りつけ、もう一匹の喉を突く。
戦闘時間、三十秒。
スマホの通知が連続で鳴り響く。
【レベル28 → レベル42】
【初ダンジョンウルフ討伐ボーナス:スキルポイント+3】
【ドロップアイテム:ウルフの牙(高級素材)×3】
太郎は息を整えながら、ステータスを確認した。
レベル42。筋力は40を超え、敏捷は50近く。もはや人間の限界を超えている。
コメント欄が騒がしくなっている。
『マジで?』
『これ本物くさくね?』
『一撃でウルフ倒してるぞ』
視聴者数が20人に跳ね上がっていた。
さらに奥へ進む。アプリから新しい通知。
『チュートリアル進行度80% スキルツリー追加開放』
最深部の部屋に到着した。そこに鎮座するのは、このダンジョンのボスモンスター——スケルトンナイト。骨の体に古びた鎧を纏い、大剣を構えたアンデッドだ。
通常なら、E級パーティーでも苦戦する相手。
太郎は深呼吸をし、配信カメラを固定した。
「みんな、見ててくれ。俺……本当に強くなったんだ」
スケルトンナイトが動き出す。大剣が横薙ぎに振られる。
太郎は軽く跳び、攻撃を回避。隙を突いて短剣を骨の隙間に突き刺す。だが、骨は硬く、浅い傷しか与えられない。
ナイトが反撃。縦斬りが降ってくる。
危険を察知し、太郎は後退。アプリの警告音が鳴った。
『警告:現在の装備ではダメージ不足。スキル取得を推奨』
太郎はスキルツリーを素早く開き、残りのポイントで「武器適性」を取得。短剣の扱いが劇的に上達する感覚が訪れる。
再び接近。ナイトの大剣をかわし、関節を狙った一撃。骨が砕け、腕が一本落ちる。
ナイトが怯んだ隙に、連続攻撃。首の骨を斬り飛ばし、ついに倒す。
【レベル42 → レベル50】
【ボス初討伐ボーナス:スキルポイント+5、レアアイテム「スケルトンの大剣」】
太郎は膝をつき、荒い息を吐いた。
勝った。本当に、単独でボスを倒した。
コメント欄は大荒れ。
『嘘だろおおお』
『これガチじゃん』
『登録したわ』
視聴者数100人超え。チャンネル登録者が急増している通知が鳴り止まない。
帰宅後、太郎はアプリから最後のメッセージを受け取った。
『チュートリアル完遂。更なる試練が待つ。神託は汝を監視している』
画面に、かすかな警告が表示される。
世界の異変が、近づいている——。
太郎は知らなかった。この勝利が、ただの始まりに過ぎないことを。
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