壮良と知らないお姉ちゃん

 保育園の駐車場に、見たことない、学校くらいのお姉ちゃんが立ってた。

 髪の毛は短くて、黒い三つ編みを持ってる。

 だれかのお姉ちゃんかな。

 そらの席に乗ったら、鏡にお姉ちゃんが写ってるのが見えた。



 ママが病院におとまりに行った日。

 パパとお家に帰ったら、玄関の横に三つ編みを持ったお姉ちゃんがいた。

 べつの部屋に住んでる子なのかもしれない。

 

「壮良、パパと2人だけど、ちょっとだけ頑張ろうな」

「うん」

 

 お姉ちゃん、そらがさみしいと思って来てくれたのかな。


 3回保育園に行って、お休みがあって、また保育園から帰って来たら、ママがおうちに帰って来てた。

 こはるちゃんは赤ちゃんぐみの1番ちいさい子よりちいさかった。

 そらもお兄ちゃんになったから、学校行けるかな。


 

 ちょっとしてから、保育園がお休みの日、こはるちゃんのお祝いに、パパのお友達のおじさん達が来てくれた。

 学校の先生なんだって。いつも遊んでくれて、優しい。

 お姉ちゃんは部屋の隅に立って、こはるちゃんを見てた。

 何か言ってる。

 よく聞こえないけど、「かして」か「かえして」かどっちか。

 ふだんは触っちゃだめって言われてるけど、そらが使うんじゃないから、引き出しを開けた。

 

「壮良、鋏に触るなっていってるだろ!」

 

 でも、パパに見つかって、怒られた。

 

「まぁまぁ翔吾、そんな言い方しなくても良いだろ」

 

 シンヤくんが、パパに言った。

 

「イヤイヤがやっと落ち着いてきたと思ったら、イタズラになって困ってんだよ」

 

 パパはちょっと怖い顔をしたけど、いつもはシンヤくんみたいにいって、ママに怒られたそらをなでてくれるから、ちっとも怖くなかった。

 

「……翔吾、悪い、煙草吸ってくるわ」

「はぁ?その年で始めるか、フツー?」

「婚活の一環だよ」

「翔吾んち子どもがいんだろよ。我慢すれば?」

「マジごめんて。発狂しそう」

 

 シンヤくんは立ち上がって、そのままお姉ちゃんの腕を掴んで玄関を出て行った。

 

「婚活かぁ、俺も吸おうかな」

「結婚したらどうせすぐに止めることになんだろ」

 

 圭介くんが言って、パパが笑った。

 お姉ちゃんがいなくなった事に誰も気づかない。


「夕月ちゃん、洗面所借りるね」

 

 戻って来たシンヤくんが手を洗ってうがいをしている音が聞こえた。

 

「なぁ、壮良。ややこしいパパがいて、お前も苦労するなぁ」

「おいそれどーいう意味だよ」

 

 パパに小突かれながら、そらの頭を撫でたシンヤくんの指の間が、まだ濡れててちょっといやだった。

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