第3話D級ダンジョンへの挑戦

「見てくださいカイトさん! 新しい装備、買っちゃいました!」

 健介が自慢げに見せたのは、中古だが手入れの行き届いた輝く大盾。

「昨日のボーナス、奮発したわね。私はこれ、新作の魔力ポーション」

 リゼも、高価な青い小瓶を揺らして微笑む。

 カイトたちがやってきたのは、D級ダンジョン『黄昏の廃村』。

 本来、F級パーティが踏み入る場所ではない。だが、昨日の「奇跡の生還」でギルド評価が一時的に跳ね上がった結果、例外的に許可が下りたのだ。

「いいか、俺が前に出る。カイトは後ろで荷物を守れ」

 健介が頼もしく盾を構える。

 カイトは思う。

(健介さんの盾、いいやつだけど……このダンジョンのボスの攻撃力、設定ミスでC級並みになってるんだよな)

 海斗の目には、モンスターの頭上に浮かぶ数値が見えている。

【種別:アーマー・ウルフ(D級)】

【攻撃力:450(※エラーにより上昇中)】

 普通に戦えば、健介の新しい盾は一撃で粉砕されるだろう。

「……しょうがない」

 カイトは歩きながら、こっそりと地面を蹴った。

 足元の影からデバッグコードを走らせる。

「システム・パッチ適用。対象:健介の盾。耐久度(Durability)に……無限大を代入」

 直後、茂みからアーマー・ウルフが飛び出した。

 時速百キロを超える体当たりが、健介の盾に直撃する。

「うおっ!? ……え、全然響かない?」

 衝撃波で周囲の木々がなぎ倒されるほどの威力。なのに、健介は片手でケロリとしていた。

「俺、実は才能あったのか!? この盾、最強だぜ!」

「すごーい、健介さん! 神様のご加護ですね!」

 聖が拍手する。カイトは後ろで「あはは、凄いっすねー」と棒読みで同調した。

 だが、順調に見えた攻略の最中、リゼが突然足を止めた。

「……何、これ」

 廃村の中央広場。そこには、D級ダンジョンには存在するはずのない「門(ゲート)」が開いていた。

 ゲートから溢れ出すのは、不吉な赤い魔力。

「バグが……連鎖してる?」

 カイトのウィンドウに、真っ赤な警告が埋め尽くされる。

【致命的なエラー:領域の重複。上位次元からの干渉を検知】

 ゲートから這い出してきたのは、全身が「文字化け」したような、歪な姿の騎士だった。

 それは、この世界のルールを守るために派遣された、システムの番人。

 だが、その番人は、なぜかカイトではなく、真っ先に聖(ヒジリ)に向かって剣を振り上げた。

「聖さん、危ない!」

 カイトの瞳から、日常を守るための「穏やかさ」が消えた。

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