第4話 【起業】隠れ住んでいた人類1000人に「楽園を見つけた」と嘘をついて、全員船に乗せた結果。~感謝の涙で前が見えねえ(笑)~

オフィスに戻ると、ホログラム通信が点滅していた。  相手は、銀河系最大の軍事企業『ギャラクティック・アームズ』の調達部長だ。


『カイドウ君。単刀直入に言おう。消耗品パーツが足りない』 「消耗品……ですか?」 『新型の生体コンピューターを開発中でね。演算処理ユニットとして、人間の脳が1000個ほど必要なんだ。……一週間以内に用意できるか?』


 1000個。  桁が違う。だが、提示された報酬額は、俺が一生遊んで暮らせるほどの額だった。   「……お任せを。ちょうど『手付かずの鉱脈』に心当たりがありましてね」


     ◇


 小惑星帯の奥深く。  磁気嵐に守られたこの宙域には、銀河連邦の目を逃れた人類の難民キャンプが存在する。  俺は、あえて武装を解除した大型輸送船で、そのドックに降り立った。  船体に、急ごしらえで描いた『地球連邦軍』のマークを輝かせて。


「……君は、誰だ?」


 銃を構えた自警団の男たちが、怯えた様子で現れる。  俺は真っ白な軍服(コスプレ衣装)を翻し、両手を広げて見せた。


「待たせたな、同胞たちよ! 私はカイドウ。旧地球軍・第3方面司令官だ!」


 嘘だ。俺はただの元・ペットショップ店員だ。  だが、絶望の淵にいる連中には、俺が光り輝くメシアに見えているはずだ。


「地球軍……? まだ生き残りがいたのか!?」 「ああ。そして、朗報がある。我々はついに、人類が誰にも脅かされずに暮らせる『第二の地球ニュー・エデン』を発見した!」


 集まってきた難民たちが、どよめく。  薄汚れた服を着た女や、痩せこけた子供たちが、俺を見つめる。  その目にあるのは、純粋な『希望』だ。


「本当なんですか……? もう、怯えなくていいんですか?」 「本当だとも。そこには青い空も、豊かな海もある。さあ、この船に乗ってくれ。定員は1000名。早い者勝ちだ!」


 その瞬間、歓声が爆発した。   「やった……助かったんだ!」 「ありがとう、司令官! ありがとう!」


 彼らは我先にとタラップを駆け上がり、輸送船へと雪崩れ込んでいく。  俺の手を握り締め、涙を流して感謝する老婆もいた。


「このご恩は一生忘れません……」 「ええ、忘れないでください。あなたたちのことは、私が責任を持って『送り届け』ますから」


 俺は聖人のような微笑みで頷き続けた。    ――3時間後。  定員の1000名が乗り込んだのを確認し、俺はハッチを閉鎖した。  船が宇宙空間へと発進する。


 船内放送のマイクを握る。  貨物室カーゴには、新しい未来を夢見る1000人の笑顔が詰まっている。  さあ、エンディングの時間だ。


『えー、乗客の皆様。本日は「カイドウ運送」をご利用いただき、誠にありがとうございます』


 俺の声色が変わったことに気づき、ざわめきが広がる。


『行き先を変更します。「ニュー・エデン」ではなく……「ギャラクティック・アームズ社・生体部品工場」へ向かいます』


「……え? おい、どういうことだ!?」 「司令官、冗談ですよね!?」


 モニター越しに、混乱する人々の姿が見える。


『冗談? まさか。君たちは選ばれたんだよ。これからは人間の脳みそとしてではなく、最新鋭ミサイルの制御チップとして、銀河の平和に貢献できるんだ。名誉なことだろ?』


「騙したな! 裏切り者ぉぉっ!」 「開けろ! ここから出せぇ!」


 怒号と悲鳴。  だが、強化隔壁はビクともしない。  俺は手元のスイッチを押した。  プシュッ。  貨物室に、薄いピンク色のガスが充満し始める。


『暴れないでくれよ。商品に傷がつく。それは強力な睡眠ガスだ。目が覚めた時には……まあ、もう脳みそだけになってるだろうが』


 バタバタと倒れていく人々。  最後まで俺を睨みつけていた子供も、母親の腕の中で崩れ落ちた。    数分後。  モニターには、静まり返った1000体の「在庫」の山だけが映っていた。


「……ふぅ。これだけの数を自力で捕獲しようと思ったら、弾薬費だけで赤字だったな」


 俺は電卓を叩く。  輸送コストとガス代を差し引いても、利益は億単位だ。


「『希望』ってのは、最高の集客ツールだな」


 俺は自動操縦をセットし、高笑いと共に祝杯を上げた。  これで軍資金はできた。  次は、俺の城(会社)を建てる番だ。

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