第6話  変な職業を押し付けられた

 ギルマスはえらく感心したようにわたしを見てた。さっきまでのおっかない目じゃなく、なんかおっかないものを見る目だ。


「たしかにおおやけにできない職業スキルだ。わが国でもほんの数人しかいないし、おまえほどの力を持った呪術師はいないだろう。せいぜい腹痛を起こさせるとか、石につまずかせるとかいった呪詛術だからな」

「せこっ」

「そう言うな。それでも王宮じゃちょっとした身分に祭り上げられるんだ。まあ誰も呪われたくないってのが本音だがな」


 それ聞いてもわたしは自慢する気もしない。なんでって、わたしごく普通のボッチ少女だよ?呪術なんて使えなし。たしかに数学の教科書を指して呪われた科目って言ったのは確かだけど、それは日本の女子高生のほとんどが持っているトラウマスキルだよ?


「あの、わたしこれからその呪術師ってやつにならなきゃいけないんですか?」


 ギルマスは一瞬黙った。そうして言葉を選ぶようにわたしに言った。


「そりゃ、そうするのが正しいのだが…あいにく呪術師というのは恐れられいてな、どんな面倒ごとになるかわからんのだ」

「わたしそんな面倒ごとに巻き込まれるの嫌です」

「なに言ってんだ!おまえが面倒ごとを起こすんだろ!その強大な呪術の力で人々を恐怖のどん底に突き落とす未来しか見えてこん…」


いやそれちがうよ!わたしそんな力ないし!


「わたし恐怖のドン族になんかになりたくありません!」

「ドン族じゃねえ。どん底!」

「はいはい」

「とにかく職業スキルをほかのにしないとな。みなおびえちまうからな」


 そう言ってギルマスはまた考え込みました。もう夜も更けたのでしょうか…外でフクロウのような鳴き声がします。しばらくすると、思いついたようにギルマスは立ち上がり、部屋の隅にあるロッカーみたいなところに行きました。そこからなにやら細い棒を取り出し、わたしに渡しました。


「何ですか、これ」

「こいつは精霊魔法師の杖だ」

「精霊魔法師ってなんですか?」

「そんなもんはこの世にない。いま俺が思いついたんだ」

「なに言ってるのかよくわかんないんですけど」


 ギルマスはやれやれ、っていう顔をしてわたしをまじまじと見た。


「いいか、おまえが呪術師って言ったらみな恐がる。だからその力は精霊魔法だって言い張ればいいんだ。精霊魔法ってなんだって聞かれたら…そのときは適当に答えとけ。もともとそんなもんはないんだからな」

「いやそれあんた適当すぎますよ?」

「それともなにか?みなに恐がれて、独りぼっちで生きていくつもりか?」


 い、いやそれだけは嫌だ。せっかく異世界まで来て、また独りぼっちなんて耐えられないよ。それに仲良くなったあの冒険者さんたちにだって、恐がられちゃ悲しいな。


「わかりました。わたし、精霊魔法師で行きます!」

「くれぐれも人前で呪術は使うな。気味悪がられちまうからな。それと冒険者クラスはミニマムクラスからだ。つまりマイナーランクってことだ。おまえの実力ならミドルランク以上だろうが、みんなの目もあるからな。まあ最初は我慢しろ」


 そう言ってギルマスは懐から何か小さな包みをわたしの前に置きました。


「何ですか、これ?」

「これはイルゴットを追い払った報奨金だ。金貨が5枚と銀貨が8枚だ。死体がありゃもっと払うんだが、あいにく目玉だけなんでな」

「そ、そんなにもらっていいんですか?相手はただのでかいインコですよ?ドラゴンじゃあるまいし、ちょっと多すぎじゃないんですか?」

「はあ?おまえ、ドラゴンまで…いや驚いた」

「いやそれ言葉のあやっていうか…」


 またおかしな誤解をされた気がした。どうもこの世界のひととうまくコミュニケーションが取れない気がする。


「とにかく自重してくれ。面倒な騒動は起こさずに、おとなしくダンジョンでも探索してろ」

「いやそんなのできっこないよ」

「それは報酬のことだな。任せておけ。悪いようにはしないし、おまえのことも秘密にしておいてやる」


 どうも話がかみ合わない。もうどうにでもなれ、だよ。


「もう帰ってもいいですか?」

「いいが、泊るところはあるのか?」


そうだった。今夜寝るとこが、ないんだった!

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とびらのむこうに ~ボッチ少女の2世界ものがたり 夏之ペンギン @natuno-penguin

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