第5話  いきなり職業選択?

 そこらにいた冒険者たちが集まってきた。なんでこんな大騒ぎしてるか、わけがわからない。


「あ、あんたこれどこで盗んだのよ!」


 その獣人の受付嬢は驚いたようにそう言った。まったく失礼な。わたしドロボウじゃないわよ。


「盗んだんじゃなくて、襲って来たからぶっ飛ばしたのよ。そしたら目が飛び出して。それで拾って来たんです」

「イルゴットをぶっ飛ばした?あんたが?まさか」

「まさかではない。われわれも見ていた。そのお嬢ちゃんがあのイルゴット…それもたちの悪い人喰いをな」


 そう言ってくれたのは女剣士のルイジーヌさんだ。彼女の眼光に、そこらの冒険者たちは縮こまった。


「こいつはすごいね。で、とどめは?」


 獣人の受付嬢が手のひらを返したようにわたしにそう言った。


「殴ったら逃げちゃいました。目玉を落っことして」

「そいつは残念だね。もし死体ぜんぶがあったらあんたは大金持ちだったのにね。でも目玉だけでも大したもんだ。もうそいつは人里には現れない。まあどこぞで野垂れ死にだからね」


 ちょっとかわいそうな気もしたが、わたしを襲いやがったんだから仕方がないよね。


「ちょっといいか?」


 囲んでいた冒険者たちをかき分けるように、すごいごっつい男がわたしの前に立った。


「あ、ギルマス、いま報告にあがろうかと…」

「話は聞こえていた。人喰いイルゴットの目玉か…」


 いまギルマスって呼ばれた。きっとこの恐ろし気な男がギルマスなんだ。それがわたしを睨んでいる。いやなんで?


「ちょっと来てもらおう」


 そう言ってギルマスはわたしの襟首をつかみ、階段を上がって行った。わたしはなすすべもなくギルマスに捕まったまま引きずられるように階段を上がった。


「入れ」


 ドアが開けられ、放り込まれるように部屋に入れられた。そこには大きなソファーがあって、わたしはそこに座らされた。ギルマスはわたしの正面に座り、その恐ろし気な目でわたしを睨んでいた。


「さあ正直に話せ。おまえは何者だ?」


 ギルマスはそう恐い顔でわたしに聞いた。いや正直にって言われても、どこをどう話せば納得するかな?わたし自身まだ信じられないのに。


「何者と言われましても…わたしふつうの女の子ですよ?」

「ふつうの女の子が凶暴で恐ろしい人喰いイルゴットを単独で追い払うことなんて不可能だ。おまえ、何か魔法とか使ったんじゃないのか?」

「魔法なんて知りませんよ。殴ったら目玉ぼよーんの、びちゃーで」

「よくわからん表現だ。異国人だな、おまえ」

「まあそうかもです」


 ギルマスは大きくため息をついた。なんか困ったような顔だ。


「おまえ、冒険者になるからには職業適性スキルというものが必要だ。採取や採掘ならハーベスターやマイナーだ。ほかにソードマンやナイトとかな」

「それがないとなれないんですか?冒険者に」

「まあそういうことだ。じゃなきゃ命がいくつあっても足りないからな」


 大変な仕事だと理解した。だったらわたし、一般人でいいや。


「では…」

「だがおまえは何か隠している。ここは誰もいない。俺だけだ。さあ、言ってみろ」


 そう言われてもなあ…。隠している、わけじゃないけどだったらこれとこれかな?わたしカバンから数学の教科書と、ポケットからスマホを取り出した。もちろん数学は呪いの教科書だからね。ああ見るだけで恐ろしい…。


「こ、これは…」

「これを知っている者は誰でも凍りつくような恐ろしい呪いの本です」

「この石板は?」

「これはスマホ。みんなを幸せにする道具です」


 まちがっちゃいない、と思う…。


「呪いの本に…スマホという石板…おまえ、呪術師だったのか!」

「え?」


 ああなんだか大変なことになったような、気がした。

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