最終章「不帯剣の旅」

旅は、終わった。


だが、

道は――終わらなかった。



旅立ち


アリアハンの朝は、穏やかだった。


魔王の影はなく、

使命の声もない。


人々は畑を耕し、

子どもたちは走り、

世界は“続いている”。


トーマスは、

城下町の外れで立ち止まった。


剣はない。

腰は軽い。


それでいい。


(……行くか)


不帯剣の誓い。

究極の剣を探す旅。


世界の裏まで探し当て、

それでも見つからないかもしれない旅。


だが、

それでも前へ進く。



勝手な同行者


背後から、

聞き慣れた声。


「で、

ついて行っても良いよね?」


振り返る。


アレルだった。


勇者の装備は、もう簡素だ。

称号も、使命も、

背負っていない。


ただの旅人。

ただの冒険者。


トーマスは眉をひそめる。


「……何を言ってる」


アレルは首を傾げる。


「だって、

一人旅でしょ?」


「危ないよ?」


「……それを言うな」



さらに、

もう一人。


「あなたの行く末に、

神は興味津々です」


ミリアだった。


当然のように、

旅装を整えている。


トーマスは、

思わず聞く。


「……なぜ居る?」


アレルは笑う。


「なぜだと思う?」


ミリアは微笑む。


「答えを言う必要は、

ありませんよね」



隊列


トーマスは、

一度だけ深く息を吐く。


(……結局、

こうなるのか)


彼は前を見る。


「俺は、

前しか知らん男だ」


「付いてくるなら、

勝手にしろ」


それだけ言って、

歩き出す。


アレルが、

すぐ隣に並ぶ。


「前に出ないよ。

隣で良い」


ミリアは、

半歩後ろ。


「後ろで、

勝手に致します」


勝手な返事。

勝手な距離。


だが――

いつもの隊列だった。



先へ


剣は、

まだ見つからない。


誓いも、

破られていない。


だが、

この男は知らない。


剣より先に――

旅そのものを、

手に入れてしまったことを。


世界は広い。

答えはないかもしれない。


それでも、

前はある。


隣も、

後ろも。


トーマスは、

前を見る。


アレルは、

横を見る。


ミリアは、

全体を見る。


そして、

三人は歩く。



――不帯剣の勇者



(そして、

物語は終わらない)

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