白銀の氷雷・新しい朝

―入隊から一年。


街に未曾有の危機が訪れた。かつて私を捨てた「白虎の里」が、街の動力源を奪い、スチーム・バレーを凍てつかせようと進軍してきた。里の精鋭部隊を率いるのは、あのお父様だった。


「動力源を封印する。そのためには、干渉波となるお前の雷を排除せねばならん。ミロ、お前という『間違い』を、ここで修正してやる」


お父様の言葉はどこまでも合理的で、冷酷だった。だが、その声は微かに震えていた。彼は里を守るという「公的な正義」の仮面を被り、娘を殺さねばならないという「私的な絶望」を必死に押し殺していたのだ。


「お父様、あなたの『正解』はもう古い! 私が、新しい最適解を証明します!」


私はガントレットを最大出力で起動させた。レーゲルが遺した「最後の仕掛け」。それは、私の生命力を燃料として燃やし、雷と氷を融合させる禁忌の機構。右腕の血管が浮き上がり、視界が白濁するほどの激痛が私を襲う。


―バリィイイイィン!


私の右手から放たれたのは、純白の「氷雷」。それは動力源の暴走を「停止」させるのではなく、雷のエネルギーを氷の結晶で「調和」させ、安定した稼働へと導く、全く新しい制御方式だった。お父様の氷の壁は、私の氷雷によってオーバーライドされ、温かな光となって街を包み込んだ。

お父様は膝を突き、震える手で砕け散った氷の破片を拾い上げた。


「……計算、外だ。……修理屋め、いい仕事を。」


その小さな独り言は、吹雪の中に消えた。だが、それは父が娘の「正解」を認めた、最初で最後の瞬間だった。

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