6 幼馴染6
可憐は、ずっと胸の奥が落ち着かなかった。
あの日、中庭で見た光景。
しょうが見せていた、あの柔らかい表情。
理由は分からない。
何を話していたのかも、結局知らないまま。
それでも、モヤモヤは消えなかった。
だから――
無意識のうちに、動いていた。
「次、教室移動だから早く行こう」
廊下で、しょうの腕を軽く引く。
「昼、一緒に食おうぜ」
昼休みになると、当たり前のように声をかける。
しょうは、少し驚いた顔をすることはあっても、
嫌そうな素振りは一切見せなかった。
「いいよ」
「お前、今日はやけに積極的だな」
そう言って笑う。
――いつも通りだ。
それが、可憐を安心させた。
しょうは、普段と何も変わらない。
幼馴染として、親友として、隣にいる。
それだけで、胸が少し軽くなる。
―――――
放課後、可憐は呼び止められた。
「可憐さん」
振り返ると、女の子が立っていた。
表情は落ち着いているが、目は真剣だった。
「……なに?」
「最近、やりすぎですよ」
その一言に、可憐は言葉を詰まらせる。
「前の告白、見てたんですか?」
女の子の問いに、可憐は正直に答えた。
「ほとんど聞こえはしなかったけど……
表情を見れば、わかる」
女の子は、少し悲しそうに笑った。
「……何も、わかってないです」
「っ」
「明らかに、私としょうくんを離そうとしてますよね」
その言葉に、可憐は反射的に否定した。
「ち……ちがっ」
声が、かすれる。
「俺は、ただ……」
何を言いたかったのか、自分でも分からない。
女の子は、一歩近づいて言った。
「それが、恋なんですよ」
その言葉が胸に落ちる。
――恋?
可憐は頭が真っ白になった。
自分がしょうを?
男を、好き?
そんなわけがない。
ずっと、そう思ってきた。
(俺がしょうを、好きなわけがない)
(男を、好きになるわけがない)
でも、その否定は、
なぜか――震えていた。
女の子は静かに言った。
「私は、振られました」
可憐は息を呑む。
「……ほんとは」
女の子は少しだけ言葉を詰まらせてから、続けた。
「伝えるつもり、なかったんですけど」
一瞬、視線が揺れる。
『しょうくんは、可憐さんが好きなんですよ』
その言葉が、喉までせり上がってきた。
でも、女の子はそれを飲み込んだ。
言ってしまえば、
もう戻れなくなる気がしたから。
「……大事にしてください」
それだけ言って、女の子は背を向けた。
―――――
その場に残された可憐は、しばらく動けなかった。
恋。
その言葉が、頭の中で何度も反響する。
思い出すのは、
しょうの笑顔。
弱さを見せた夜。
隣にいるのが当たり前だった時間。
(……俺は)
答えを出すのが、怖かった。
でも、確かに分かることが一つだけある。
――しょうが、誰かの隣にいるのは、嫌だった。
それだけは、嘘じゃない。
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