5 幼馴染5
放課後の中庭は、風が気持ちよかった。
ベンチに座る俺と彼女の間には、ほどよい距離があった。
近すぎず、遠すぎず。
それが心地よくて、少しだけ安心していた。
「……しょうくん」
彼女は指先をぎゅっと握りしめて、視線を落としたまま言った。
「私、しょうくんのこと、好きです」
まっすぐな告白だった。
胸がどきりと跳ねて、それから静かに落ち着く。
驚きはあったけど、嫌な気持ちはなかった。
「ありがとう」
そう答えて、少し間を置く。
「正直に言うね」
彼女は、逃げずに俺を見た。
「……わかってます」
そう言って、苦笑する。
「可憐さんが、好きなんですよね?」
言葉にされて、胸の奥がきゅっと締まった。
俺は、少しだけ迷ってから――頷いた。
「うん」
それでも、彼女は泣かなかった。
「……よかったら」
そう前置きして、彼女は聞いてきた。
「可憐さんの、どんなところが好きなんですか?」
俺は、自然と可憐の顔を思い浮かべていた。
走っている背中。
誰かが立ち止まったとき、振り返る姿。
「……強いところかな」
言葉が、すっと出てくる。
「迷ってる人がいても、置いていかないんだ。
むしろ、自分から手を引いて、連れ出してくれる」
彼女は静かに聞いている。
「誰よりもまっすぐで、諦めることを知らないところ」
一度息を吸って、続けた。
「……でもさ」
少しだけ、声が柔らかくなる。
「実は、弱い部分もあるんだ」
喉の奥が、あたたかくなる。
「俺にだけ見せてくれる、弱い部分」
その瞬間、自分でも分かるくらい、
表情が緩んでいたと思う。
彼女は、それを見逃さなかった。
「……それを、伝える気はないんですか?」
俺は首を横に振った。
「ないよ」
即答だった。
「男から好意を向けられても、可憐が困るからね」
それだけの理由だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
彼女は少し笑って、立ち上がった。
「……ありがとう。ちゃんと、振ってくれて」
「ごめん」
「いいえ」
そう言って、彼女は背を向ける。
「しょうくん、優しいですね」
それは褒め言葉であり
少しだけ、諦めの混じった言葉でもあった
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