第3話 #ステータスとスキル確認
「収穫があったのは走り方だな」
俺は外でステータスのSPDにのみ焦点を当てて色々試していた。
SPDにのみ絞ったのはこの数値だけが二桁に達しており
他の項目より群を抜いて高かったためだ。
SPD以外の数値が全て一桁で、数値が低いということはそれが及ぼす影響も軽微ということ。
数値もいじって差異を検証できないため、一番高い数字に焦点を絞っていたのは…正解だった。
人間のように二足歩行で走った時は、そこまで速く走れていなかった。
なんなら人間の頃より遅い。身体も当時より小さいからな。
しかし動物のように四足歩行の姿勢で走るとすんなりと素早く走る事が出来た。
驚くべきは走り方が手に取るように理解できたこと。
動物の走り方は当然知っている。大概どこかで見た事があるからな。
しかし実際にその姿勢で走れ言われると、詳細はあまり覚えていなかったりする。
例えば馬が走ってる姿は見た事あるが、足がどういう順番で動いているかは
詳しい人以外は分からないんじゃないか。
少なくとも俺は問題に出されたら分からない。
兎の場合は馬より少し想像しやすいかも。昔うさぎ飛びというトレーニング法があった筈。
後ろの両脚を同時に使って跳ねるように走る両脚飛びが、兎の走り方だ。
で、それを見様見真似でやってみようとしたらできた。
両手両足を地面につけ走る意識を持った瞬間、思考に走り方の情報が入ってきた。
文字でもなくイメージでもなく、まるで最初からそうやるものと理解しているように走れた。
「構え、それと何をしようとするかの考えか」
ステータスのSPDが適用されるのに、そういった条件がおそらく…
というか確かにある。
二足歩行が遅く、四足歩行で速いなら、そう判断すれば合点がいく。
それならばと思いスキルの検証に入ってみる。
俺は玄関の扉に貼ってあったメモ書きを見る。
スキル:リスポーン、ミサイルずつき、衝撃耐性。
スキルのうちの1つ "ミサイルずつき"。
なんともまぁ現代のゲームにある造語みたいな…
というかどう考えてもあれだよな。
ポ〇モンのロケットずつきを意識してるだろコレ。
"ロケットずつき"という言葉は、日本が誇るゲームの代表 "ポ〇モン" の技だ。
ロケットのように高速で頭から突っ込むという攻撃のこと。
「おかげでイメージがしやすいけどね」
異世界が地球側の知識を基に作られているか。はたまた逆なのか。
妄想が捗るがこれを考えても仕方がない。
まずはミサイルずつきのイメージを考えよう。
ス〇ブラのピ〇チュウやル〇ージの攻撃がそれに近いか。
「まずふんばるように屈んで両脚に力を入れて」
「目の前に敵がいると想定して頭を向け、目で見定める」
発する言葉の通りに身体を動かすと、全身が発光し始める。
脳内に情報が流れ込む感覚はなかったけど、これは正解と見ていいか。
確かスキル項目のミサイルずつきの説明には
"威力はSPD参照 SPD50倍" と書かれていたことを思い出す。
スキルによっては攻撃がSTRやINTでなく、別のステータスを参照するやつもゲームによってはあったりする。
というか、それよりぶっちゃけバカみたいな倍率だよな。
SPD30x50ってことは1500だぞ。
普通もっと刻むよな?
「さてどれくらいのスピードになるか味わッ――ブッッ!!!?」
言い終わる前にふんばっていた両脚に勝手に力が入り地面を蹴り飛ばした。
そして蹴り飛ばしたと認識した時には森の数メートル手前、結界範囲ギリギリまで飛んでいた。
転移か!?やべえ死ぬッ!!と錯覚するほどの速度に驚愕する。
結界範囲に出る事なく範囲内と範囲外の境界で完全に停止した。
これはずつきスキルではなく結界内の影響だ。
家のスキルのうちの1つ、結界の説明項目にはこう書かれていた。
"自殺、殺意、悪意を含んだ攻撃の拒絶"。
よって俺が死んだ!と本気で感じた事で攻撃が止まったといえる。
猪の攻撃が外側から拒絶されたのもこれが理由だろう。
「え、もしかして死ぬんかなこれ!?音速で動いた事ないから分からんけど」
しかし実際に死ぬかどうかは分からない。分からないが…
死への恐怖より遥かに好奇心が勝っているのは、なんていうかゲーム感覚だからか?
それとも自分の性格だろうか?危機意識が足りていない?
よく不死身でも痛みの記憶は残り精神はすり減る…なんて話をよく漫画やゲームで見るが。
そういった負の感情は今のところ抱いていない。
もう一度ミサイルずつきをしようと構えるが、それだけで全身の発光はなく
スキルが発動することはなかった。
さらに結界外に出て、猪への殺意を込めその辺にあった小石を拾い、軽く投げる。
石は結界にぶつかり落ちる。そこで見えない結界の位置を大体把握して
ほぼ結界と零距離でミサイルずつきをしてみようと構える。
ここでは身体の発光が自分でも確認できた。
発動を確認し、5秒後。両脚が動くと同時に、物凄い衝撃が頭に走った。
衝撃耐性がありながら、そして結界と距離がほとんど無いながらも、かなりの激痛が頭を巡り、結界内に転がりながら入り悶え苦しむ。
「いってえええ!!!!!!!」
頭全体から首に走る逃げられない痛みを声で発散し逃がそうとしても逃げられない。
頭を抱えながら数分転がってなんとか痛みを紛らわせ、漸く落ち着く。
今の行動でわかったことがいくつかある。
「一つ…死ぬと自覚した事は結界内で止まるか、発動できなくなる!」
「一つ…結界外でやると発動できるけど俺も普通に拒否られてぶつかる!」
これは猪を倒せる切り札かもしれないが、自分も死ぬかもな。
もう割り切ってるけどさ。最悪リスポーンできるから!
そして俺は検証を止め、玄関に貼ってあったメモ書きを取り、2階の自室のベッドまで行き寝転ぶ。
デジタル時計を見ると18時になっていた。
窓から外を見ると、昼間のように明るい。
しかし俺のそれに対する反応は薄かった。
そもそも渦を巻いた雲が空全体を覆って青空が見えない異変でお腹いっぱいなんだ。
今更夜は無いよとか言われてもあぁそうとしか思わない。
特に弊害を感じないしね。最悪カーテン閉めれば部屋は暗くできるんだし。
俺はこめかみを2回叩きステータス画面を見て、再度情報を見直す。
スキルはリスポーン、ミサイルずつき、衝撃耐性。
リスポーンは死ぬと家で生き返る能力。身体も健康体になる。
ミサイルずつきはおそらくミサイルのように頭から素早く突進する攻撃。
威力はSPD値を参照にしてSPD値に50倍の倍率がかかる。
衝撃耐性は衝撃に対する耐性、と至ってシンプルな説明だ。
倍率も何も書かれていない。
「曖昧すぎるだろ…おそらくDEFを参照か被ダメージ減少だとは思うけど」
ステータスの数値や威力があるなら、防御による減衰からダメージが発生する。
しかし体力表示がないからどれだけのダメージを与えれば変化が起きるか分からない。難儀だよな…昔のモ〇ハンやってるみたいだ。
そういえばもう1つ分かった事があったんだ。
と、机から枕の横に置き直した1つのビー玉を見つめる。
するとビー玉の上に黒い板と文字が浮かび上がる。
対象物を3秒ほど直視すると、対象物の詳細が浮かびあがるというもの。
この3秒の間に一本の横棒が現れ左から青い色が塗られて蓄積されていく。
確かこれの名称はプログレスバーというやつだ。
よくゲームとかで、時間のかかる処理とかをするときに表示されるヤツ。
視覚的に分かりやすくなるんだよな。
つまり簡易的な鑑定のような能力だった。
しかしスキルではないんだよなこれ。
発動するにはこめかみを2回叩きステータス画面を表示させ
その上で対象物を調べるという意識を持ち、数秒直視するだけ。
そして見られるものと見られないものがある。
例えばこのビー玉は詳細説明を見られたが
普段部屋に置いてあるベッドや棚、パソコンなどは見られなかった。
多分異世界の物が鑑定対象になっているってことだ。
「そしてこのビー玉はスキルの実体化」
今あるビー玉は1つ。説明には衝撃耐性と書かれていた。
これは俺の死体を解体して、光にした時に出てきた。
取り込む事でスキルを得られると書かれている。
つまり解体は経験値と解体したもののスキルを得られるということだ。
ちなみにビー玉は2つあったが1つは外に出る前
この鑑定能力が分かった時点で食べて取り込んでいる。
食べたのはなめた時に甘かったからという単純な理由。
しかしレベルが上がったり倍率が上がる事はなかった。
レベル概念が無いか重複は禁止なのか、
取り込み方が間違いだったのか…そのあたりは不明だ。
よって残りのビー玉は食べずに取っておいている。
「あと検証したいけどしたくないのがこれか…」
俺のステータス画面を横にスライドさせ、家のスキルツリー画面に遷移する。
そこにあるあの文字。
生活レベル1、機能レベル1、その右にある灰色の配信レベル1という文字と…
【視聴者召喚】
「コンテンツとしては面白いかもだけどヤバすぎだろ!」
字面はエンタメとして面白いと思うが、少なくとも諸手を挙げて歓迎というわけにはいかない。
俺は一度死んでいるからな。死を経験するのは俺にとっては案外重くなかったし
リスポーンもできるけど…問題は俺が平気だからじゃなくて、それが隣り合わせにある世界だということ。
普通に死を体験する世界に召喚したいか?視聴者を?流石に抵抗がある。
更に恐ろしいのが、そのスキルが配信レベル1の項目に記されているということ。
こんな初期レベルでそれがあるということは、ゲームでいうと
開発者に推奨されているということだ。そしてそれを基にしてゲームの難易度や設計が組まれている……と思うと今後が不安すぎる。
「そもそも視聴者全然いないんですけどね!」
個人無名男性配信者にはこの心配は杞憂か…人だっていないし。
たまたまミルクブッセさんはいてくれたけど、恩人なら猶更呼びづらい。
「いずれ、だなこれは。猪は俺だけでどうにかする!」
頼る事も大事なんだろう。どこかで助けてもらう状況になるかもしれない。
が、俺自身がトラブルの渦中にいるんだから、俺だけでやってみなきゃ駄目でしょ。
打開と挑戦はゲーマーとして、配信者として上等だろ、と息巻いた。
「でも他の【配信ドローン】と【モザイク処理】は欲しいからとっとこ~!」
それはそれ、これはこれ。俺はもう2つの項目に興味が惹かれて
1つだけあったスキルポイントを使用して躊躇なく配信レベル1の文字を押す。
いくつかの確認作業があった後、問題なく取得できた。
「いでよ!配信ドローン!!」
…といってみたものの、静寂だけが部屋を覆った。
まあそうだな、うん。ステータスオープンも言葉じゃなかったんだから
それ以外だろ普通。いや言ってみたかっただけだから。
ベッドの上で立ち上がり部屋の周囲を見渡す。
するといつも使ってる机と椅子と、俺との間でスマートフォンが浮いていた。
ステータス画面は表示されたままなので異変のあるスマートフォンを直視する。
スマートフォン自体は俺のものだが、浮遊しているのはスキルが影響している筈だ。
なら鑑定も反応するはず。
その予想は当たっており、横棒が現れ青くなっていく。
そして黒い板にはこう書かれていた。
「<配信ドローン(仮)、球空間半径20cm内のものを浮遊、追尾させられる>……は?」
詐欺だろこれ!!こっちは近未来の球体マシーンみたいなのを想像してたのに!
なんだこの微妙に現在と未来が混在した機能は!
てかドローンじゃなくて空間操作だろ!!いや空間操作ってなんだよ!
しかも(仮)なんて文字なかったろ!取得した瞬間に出やがった…
してやられたと頭を抱える。配信なら撮れ高だったかもしれない。
「あとは視聴者召喚とモザイク処理か」
落ち込んでも仕方ないから思考を切り替える。
視聴者召喚は置いておくとして、モザイク処理がどんなものなのかを確認する必要があるよね。
そうときたら検証検証!
俺は自室から1階台所へ向かいながらスマートフォンの画面を起動する。
スマートフォンからBouTubeの配信設定画面を開きタイトルをテキトーにつける。
配信には公開設定というものがあり、世界中に閲覧を許可するのを公開、配信URLを知ってる人が閲覧できるのが限定公開、自分以外に一切見せない非公開という設定ができる。
非公開は主に録画用や設定確認用として用いられる。よって俺は非公開を選択する。
迅速且つ、間違って公開しないように慎重に確認し配信を開始する。
そして台所にある包丁を取り出し首に向ける
「はいじゃあ自殺しま~す!!!」
勿論刺す気はない。というか刺せない。
結界の能力がそれを許さないからだ。
包丁は首元数センチ手前で止まる。
どれだけ力を入れても、それ以上包丁が進む事はなかった。
その後包丁を置き、スマートフォンを配信ドローン(仮)とかいう詐欺空間から取り出して記録したデータを見直してみる。
すると俺の声が「自殺」から消えていて首元に包丁を近づけ、手が結界効果により
止まった少し手前の段階で強めのモザイク処理が入る。
4ブロックで何も見えない。
「ワードが完全に消えていて、包丁は手前でモザイク処理か。」
リアルタイムでこうも精巧に反応し処理されるのは現代機械の性能域を超えている。
それこそ意志や思考に干渉している。結界と同じ様に。
驚くべきは干渉力を以ってして、地球側の機材を制御してしまっていることだ。
「処理のための遅延すらないんだからヤバいなこのスキル!」
これはかなり便利だ。あとはブロック数とか諸々詳細設定できれば完璧。
俺はスマートフォンから配信終了ボタンを押し、(仮)空間に投げる。
ドローンとは名ばかりで小物持ち運びにも使えるからこれも便利っちゃ便利か。
とりあえずのステータスやスキルの確認を終え、ふぅと息を吐く。
色々やってみたが、猪をどうにかするのはかなり楽かもしれない。
いや、場合によってはかなり楽になるかも…
思案の末、俺はその答えに辿り着いていた。
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