第1話初配信、同接一からはじまる逆転劇
死神の鎌が振り下ろされる直前、俺がやけくそで押した配信開始のボタン。
空中には半透明の画面が浮き、そこには非情な現実が映し出されていた。
視聴者数、一人。
コメント、何これ。
たった一人。それも、偶然どこかの街で端末を見ていた暇人だろう。
当然、俺の体には何の力も湧いてこない。死神が放つ冷気で、肌がピリピリと焼ける。
「死ね、虫ケラが」
死神の鎌が空を裂く。俺は転がるようにしてそれを避けた。
心臓がうるさい。泥にまみれ、スマホ型の端末を震える手で掲げながら、俺は必死に叫んだ。
「見てる奴、誰でもいい! 拡散してくれ! このままだと俺、あと十秒で死ぬ! 死ぬシーンが見たくなければ、シェアボタンを連打しろ!」
死に物狂いの絶叫。それが画面の向こう側に伝わったのか、視聴者数が動き出した。
視聴者数、十人、五十人、二百人。
コメント、え、これ本物の死神。騎士団が全滅してるじゃん。おい、この新人死ぬぞ。
切迫した状況が本物だと伝わり、魔導ネットワークを通じて一気に噂が広まり始める。
通知、世界各地でシェアされました。
視聴者数、一万五千人突破。
その瞬間、俺の体が熱くなった。
端末を通じて、画面の向こうにいる何万人もの手に汗握る熱狂が、目に見える魔力の奔流となって俺に流れ込んできたんだ。
「……これか。これが、このスキルの正体か!」
視界の端にステータスが弾け飛ぶ。
パッシブスキル、注目こそ力。現在のシェア数に応じた防御バフを付与します。
死神が再び鎌を叩きつける。今度は避けない。
ガキン!
鋼鉄がぶつかり合うような音が響き、俺の目の前で鎌が止まった。
「な……なぜだ! ただの人間が、我が一撃を片手で受け止めるだと!」
「悪いな、死神。今、俺の後ろには何万もの野次馬がついてるんだ。一人じゃねえんだよ」
画面の中のコメント欄が、かつてない速度で流れ始める。
視聴者数、十万人突破。
「お前ら、最高のリアクションをありがとう。……お返しに、とっておきのエンディングを見せてやる!」
俺は端末を死神の顔面に向け、最大出力で投稿を確定させた。
視聴者たちの興奮が、純粋な破壊の光へと変換される。
「拡散されろ、終焉の炎上!」
まばゆい光が爆発し、ランクSの魔物は断末魔を上げる暇もなく、情報の濁流に飲み込まれて消滅した。
静まり返る戦場。
俺の端末には、止まらない通知音と、見たこともない桁の数字が表示されていた。
フォロワーが百万人を超えました。
これが、俺がこの世界で成り上がるための、最初のバズだった。
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