第23話 「理由を聞かれる側」
月曜の朝。
竹本ゆうじは、いつも通りの時間に出社した。
特別なことは、何もない。
仕事も、探索も、安定している。
午前中の会議が終わった後、上司に呼び止められた。
「竹本、ちょっといいか」
会議室に二人きり。
この状況に、心当たりはなかった。
「最近、トラブル対応が早いな」
「そうですか?」
自覚は、あまりない。
「先週の納期調整、どうやって判断した?」
ゆうじは少し考える。
「全体を止めるより、一部を切り離した方が安全だと思いました」
上司は、頷いた。
「理由は?」
「戻せる選択肢を残したかったので」
その言葉に、上司は少し笑った。
「それ、現場向きだな」
実は、部署内で小さな配置換えが検討されているという。
トラブル対応や調整役を担う、補佐的なポジション。
「派手じゃないが、重要だ」
「僕で、いいんですか?」
「無理をしない判断ができる人間が、今は足りない」
その言葉は、意外だった。
数日後。
正式に、役割が一つ増えた。
昇進というほどではない。
肩書きも、給料も、少しだけ。
だが、期待されている内容が違う。
「判断を、急がなくていい役」
それが、ゆうじの新しい立ち位置だった。
昼休み。
同僚が声をかけてくる。
「最近、落ち着いてるよな」
「そうですか?」
「焦らせない感じ。助かる」
ギルドとは、真逆の評価だと思った。
だが、本質は同じだった。
夜。
ギルドに顔を出す。
「今日は、潜らないんですか?」
みことが聞く。
「会社で、少し役割が増えました」
「それは……おめでとうございます?」
疑問形なのが、らしい。
「小さいですけど」
「小さい方が、長く続きます」
坂倉が、後ろで言った。
「越えない人間が、必要な場所もある」
ゆうじは、静かに頷いた。
帰り道。
ネオンが、いつもより穏やかに見える。
強くなったわけじゃない。
稼げるようになったわけでもない。
ただ、判断の仕方が、評価された。
それで、十分だった。
探索者としても、会社員としても。
自分の速さで、前に進めている。
竹本ゆうじは、少しだけ背筋を伸ばし、家路についた。
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