第7話 「一段階、上の空気」


ランクEダンジョンの入口は、ランクFとは少し違って見えた。

構造自体は似ている。

ただ、空気が重い。


「深呼吸しときましょうか」


探索者ギルド東湾支部の前で、みことが軽く言った。

今日は三人での探索だ。


「一?三層だけ。調査目的」


坂倉が念を押す。


「何かあったら、すぐ戻る」


「了解です」


ゆうじは頷きながら、影鉄のナイフを確認した。

手に馴染んでいる。

それだけで、少し落ち着く。


入口をくぐる。

ランクE一層目。


足音が、妙に響く。

天井が高く、視界が広い。


「敵、少なそうですね」


「油断は禁物」


坂倉の声は低い。


現れたのは、ランクFで見慣れたスライム。

ただし、動きが速い。


「来ます」


ゆうじは一歩下がり、スキルを発動。


《ウィンドカッター》


風の刃が直撃し、スライムが弾ける。

威力は、以前より安定している気がした。


二層目では、ゴブリンが二体。

装備が少し良い。


「右、任せます」


坂倉の指示に従い、ゆうじは距離を取る。


《ストーンバレット》


石弾が命中。

みことの回復が、必要最低限で入る。


戦闘は短い。

だが、気を抜く暇はなかった。


「疲れてない?」


みことが確認する。


「大丈夫です。まだ」


無理をしていない。

それが自分でもわかる。


三層目。

ここで引き返す予定だ。


部屋の隅に、小さな宝箱があった。


「……運、いいですね」


坂倉が警戒しつつ開ける。


中にあったのは、細身の短剣用の鞘。

防御と、武器の耐久を少し上げる。


「地味ですが、当たりです」


「地味、助かります」


みことが笑った。


それ以上、奥には行かない。

予定通り、帰還。


ギルドに戻ると、三人とも無事だった。


「ランクE、どうでした?」


受付に聞かれ、ゆうじは答える。


「……空気が違いました」


それだけで、十分だ。


帰り道、夜風が心地いい。

一段階、上に行った。

でも、急いではいない。


「次は、また余裕があるときだな」


小さな成長を、確かめるように歩いた。

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