第6話 「三人だと、少し静か」


集合時間は、夕方六時。

探索者ギルド東湾支部の入口前で、竹本ゆうじは立ち止まった。


「……やっぱり、緊張するな」


一人で潜るのとは、勝手が違う。

足並みを揃える必要があるし、判断も共有しなければならない。


「お待たせ」


声をかけてきたのは坂倉だった。

今日は軽装で、使い込まれた片手剣を腰に下げている。


「早いですね」


「合同探索は余裕を持たないと」


続いて、みことが現れた。

小さめのバッグに、回復用の道具が詰まっている。


「今日は様子見ね。三層まで」


「助かります」


最初から無理をしない前提。

それだけで、気が楽だった。


ランクFダンジョン。

入口をくぐると、三人分の足音が重なる。


「竹本さんは真ん中で」


坂倉が言う。


「前が俺。後ろが三枝さん」


役割分担は明確だった。

前衛、後衛、支援。


一層目。

スライムが二体。


「行けますか?」


「はい」


ゆうじがスキルを発動する。


《ストーンバレット》


石弾が一体を削る。

もう一体に坂倉が踏み込み、剣を振る。


「ナイス連携」


短い言葉だが、胸が少し温かくなる。


二層目では、ゴブリンが現れた。

一体、弓を持っている。


「後ろ下がって」


みことが声をかける。


ゆうじは指示通り距離を取る。

《ウィンドカッター》で牽制。


坂倉が前に出る。

みことの《ホーリーライト》が淡く光り、傷を塞ぐ。


「回復は最小限にしてます」


「助かります」


三層目で、小休憩を取る。

壁際に腰を下ろし、水を飲む。


「竹本さん、判断が早いですね」


坂倉が言った。


「無理しないって決めてるだけです」


「それができない人、多いんですよ」


みことも頷く。


「強くなるより、生き残るほうが難しい」


その言葉が、深く残った。


帰還は予定通り。

戦闘は多くなかったが、疲労も少ない。


ギルドに戻ると、三人でドロップ品を分ける。

今回は素材中心。大きな当たりはない。


「でも、安定してますね」


「ええ」


坂倉が笑った。


解散前、みことが言う。


「また行きましょう。無理しない範囲で」


「はい」


帰り道、ゆうじは一人になる。

それでも、心は静かだった。


一人で潜るのもいい。

三人で潜るのも、悪くない。


選べるということが、何より大事だ。

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