第17話 いまできること
洞窟内を歩きながら、
わたしは少しだけ考えていた。
考えて、考えて、考えて――
正直、埒が明かないな、と思った。
このダンジョンには期限がある。
まだモンスターとも遭遇していないし、
このまま進み続けるのも難しい。
確実に、ポイントは伸びていない。
慎重にやっても、事故を避けても、
結果は、あまり変わらなかった。
「……今日は、少し話してからにする」
足を止めて、配信をつける。
配信、開始。
「この身は、包葬 四裂という」
「……まず、前提を話す」
少しだけ間を置く。
言葉を選んでいる、というより、
正直に言うかどうかで迷っていた。
「……他の参加者の配信を、改めて見た」
コメントが流れる。
・偉い
・研究してる
・遅くない?
「制御が、効いている」
「効率良く進めている」
「……無駄が、無い」
淡々と、事実だけを並べる。
「それが、このダンジョンの正解だと思う」
・確かに
・洞窟だしな
・静かに行くやつ
「……殺害を目的としていない以上」
「今回のダンジョンイベントは……この身には、適していない」
言ってから、少しだけ視線を逸らした。
・向いてないって言っちゃった
・冷静だな
・でも見てて楽しいぞ
「否定はしない」
「……合っていない」
でも、と続ける。
「だからといって……何もしないで終わるのは、嫌だ」
洞窟の壁に、軽く手をついた。
「このダンジョンは、洞窟だ」
「閉鎖空間だ」
「……スキルを出し続ければ、被害が出る可能性がある」
・それはそう
・前科あるし
・自覚あったんだ
「だから――」
一拍。
「今日は、今日だけだ」
「出来ることを、全部やる」
「スキルも……出せるだけ、出す」
少しだけ、声が低くなる。
「……今日で、終わらせるつもりでやる」
コメントがざわつく。
・覚悟決まった?
・今日が山場か
・潔いな
「……その先は、結果を見て考える」
逃げ道を残す言い方。
でも、嘘は言っていない。
「最低限、思いつくことはした」
「検証もした」
「……だから今日は、全開だ」
深く、息を吸う。
「被害が出そうなら、止める」
「それも含めて……判断する」
視線を、まっすぐカメラに向けた。
「……付き合える者だけ、付き合ってくれ」
・了解
・無理すんな
・でも事故るなよ
小さく、息を吐く。
正直、怖い。
正直、無理かもしれない。
それでも。
「……行く」
洞窟の奥へ、一歩踏み出す。
――今日は、ここまでやる。
……目的は、もう達成している気もするけど。
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