第14話 ま、まずい

 ……まずいな。


 起きてすぐ、何の気なしに端末を開いて、わたしは固まった。

 昨夜の配信アーカイブ。再生数が、二百ちょっと。


 思ったよりも多い。

 その理由は分かる。


 数字を二度見してから、端末を伏せる。


 …切り抜きが回ってるのは、前から知ってた。


 先日の戦闘。

 雷の人――あの大手参加者とのやつ。


 コメントでも何度か見かけてたし、

 入口付近ですれ違った人に

「この前の人ですよね?」

 って言われたこともある。


 分かってた。

 ただ……見てなかっただけだ。


 だって怖いし。

 どう映ってるか、想像つかないし。


 端末を裏返して、深呼吸する。


 ……確認だけ。

 本当に、確認だけ。


 そう言い訳しながら、もう一度端末を開いた。


 コメント欄を流し見する。


 ・雷の人とやってたやつだ

 ・あの戦闘の人だよね

 ・切り抜きで見たことある


 ……やっぱり。


 観念して、リンクを踏む。


 再生。


 映像は雷の人視点だった。

 冷静な声。状況判断。雷のエフェクト。


 その奥に――わたし。


 立ってる。

 しかも、床が割れてる。


 編集が派手だ。

 スロー。効果音。


 ……いや、うん。


 さらに気になったのは、テロップだった。


 字体。


 ……なに、このフォント。


 よく見ると、角ばってて、にじんでて、

 妙に不揃いで――


 ……血文字だ。


 ホラーじゃん。


 思わず動画を止める。


 ……そう見えてるんだ。


 胸の奥が、じわっと冷える。


 冷静に見てみると、確かに怖い。

 普通に。

 というか、だいぶ。


 気狂いに見える。

 それが泣きながら謝罪って、余計に怖い気がする。


 端末を見下ろしたまま、ぽつりと呟く。


 ……自分では、もう少し可愛いと思ってた。

 それに、話すのも上手いと思ってた。


 沈黙。


 しばらくして、そっと再生を止めた。


 切り抜きの再生数は、

 わたしの配信アーカイブより多かった。


 ……うん。


 次は、自分の視点で話そう。


 血文字じゃないフォントで。


 次は大丈夫。

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