第7話 政略結婚
桐生和子という女性の存在が、松島に、
「まるで走馬灯」
といってもいいような過去のことが、目まぐるしく見せつけられたかのように感じられたのであった。
そのせいもあってか、
「意識しないでおこう」
と思った和子に対して、どうしても、必要以上に意識をするという感覚がよみがえってきたのだ。
よみがえったというのは、まるで、
「デジャブ」
のような感覚ということで、きっとその、
「前に感じたような気がする」
というのは、思い出したいくつかの中にあることだろうと、感じるのであった。
和子の方も意識はしているようで、見ている限り、
「目が合っている」
というのは間違いがないと思われるのだが、
「目線が合っている」
という感覚ではないという思いであった。
お互いに意識はしているのだが、その先に見えているものが同じだという感覚ではなかったのだ。
それが、
「年齢差」
というものにあるのかも知れない。
付き合っていた、
「洋子」
あるいは、交際から結婚に入った
「さつき」
との間では、
「目が合っている」
という感覚は、そのまま、
「目線が合っている」
ということに結びついてきた。
今回のような。
「目が合っているのに、目線が合っていない」
という感覚は初めて味わうものだったのである。
ただ、その方が、気は楽だった。
それは、
「年齢差」
というものも影響しているのだろうが、今まで味わってきた、
「挫折」
であったり、
「後悔の念」
というものを、二度と味わいたくないという思いから、目線が合わないのは、これ以上の発展がないと感じさせ、気楽にさせてくれるのであった。
ただ、なつかしさから、
「心の余裕を、少しでも長く感じていたい」
という思いが強いと感じると、逆に、
「俺は、もう若くないんだ」
と感じるに至るのだった。
実際に、
「もう若くない」
という思いと、
「まだ若いと思っていたのに」
という思いとで違うだろう。
「実際に、それだけいろいろ経験している」
ということから、
「余裕を持つこと」
というのが、
「年を取ることだ」
と考えると、そこで別の言葉が頭に浮かぶのだ。
「年を取るのではなく、年齢を重ねる」
という考えだということで、
「年を取ると、先が見えてくる」
と感じられるが、逆に。
「年を重ねる」
ということは、
「ここまで登ってきた実績があるから、気持ちに余裕がもてる」
ということであった。
「余裕を持つということは、経験に何かのプラスアルファが加わり、これからの人生、決まったものにならず、まだまだ楽しいことがある」
と考えられるというものであった。
だから、
「今までの人生をやり直せるとしたら、どの時代に戻りたいか?」
といわれることがあったが、松島は、
「そんなことは思わない」
と答えるのだった。
これは、
「タイムトラベル」
という発想の中で、普通であれば、
「タイムマシンに乗って、今現在の自分が、過去のどこかに旅をする」
という発想である。
だから、もちろん、
「過去の自分と出会う」
という可能性は十分にあるわけで、それが、いわゆる、
「タイムパラドックス」
ということで、SFの世界としては、大きな問題になるということである。
しかし、
「過去のどこかに戻れる」
という発想は、
「タイムマシンを使う」
という、
「タイムスリップ」
と呼ばれるものと違い、
「過去の自分に乗り移る」
ということで、
「未来に起こることを知ったうえで、人生をやり直す」
という考えかたから生まれた
「タイムリープ」
という考えである。
これは、
「過去の自分に乗り移る」
ということなので、
「同じ時代に、同じ次元で、同じ人が存在している」
という、
「タイムパラドックス」
というものが存在しないということになるのだ。
そう思えば
「実に、タイムトラベルとしては、都合のいい考えだ」
といえるだろう。
ただ、これは、あくまでも、
「本人に関わる」
という問題であり、
「本人の歴史は、本人が過去に戻るということで変わらないが、実際には、歴史全体を変える」
ということになるだろう。
なんといっても、未来を知っている本人が、過去に存在するということは、本来、過去の自分が歩んできたことが、
「正しいのか間違っているのか?」
ということが分かるだけに、
「間違っている」
と感じた方向に向かうということはないだろう。
それを考えると、
「自分で自分の人生を崩す」
ということになり、
「本来、自分がいた未来とは別の未来が開けた」
ということであり、それこそ、
「パラレルワールド」
という発想になるのだろう。
だから、
「パラレルワールドという発想があるから、タイムリープが考えられた」
ということなのか、それとも、
「タイムリープの発想から、その辻褄合わせとして、パラレルワールドが考えられたのか?」
ということを考えると、まるで、
「ニワトリが先かタマゴが先か」
ということになるのであろう。
ただ、松島が自分の生き方を考えた時、
「自分にタイムリープはいらない」
と思うのだ。
それは、過去に戻って、今までいた未来の世界の自分以外も変わってしまう可能性があるということが分かるからだ。
それこそ、
「タイムパラドックス」
というものと、発想は同じなのではないか?
と考えるのであった。
だから、今回、かつて一番愛したと思っていた洋子の面影がそのままと感じられる桐生和子が現れたというのは、どこか自分の中で、
「タイムリープ」
であったり、
「タイムパラドックス」
というものを感じさせるのではないかと思うのだった。
そもそも、
「SF的な発想を思い浮かべた」
ということで、
「気持ち的に、恋愛感情が本当にあるのか?」
と考えた時、
「なんとも言えない感情になってきた」
と感じたのであった。
今回の桐生和子と、吉谷洋子は、苗字が違うので、
「似て非なるもの」
と思っていたが、どうにもそうとは思えないので、和子に少し、母親のことを聞いてみた。あまり細かく聞くと、相手に警戒されることになりかねないので、必要以上のことは聞かなかった。
しかし、本当に自分がタイムスリップではなく、あタイムリープした気分になったのは、
「以前の記憶を持ったまま、過去の自分に乗り移った」
ということで、余計にリアリティであるのだ。
だから、話の内容もさることながら、話し方やくせを考えると、間違いなく、
「洋子を見ているようだ」
と思えてきた。
思わず、このまま、
「付き合ってほしい」
といっても、和子は承知しそうな気がしたからだ。特に、
「私はお母さんと似たところがあって。それが、年上好きというところだと思っているの。特に、お父さんくらいの人でも、全然大丈夫で、そういう意味では、松島さんもありですよ」
というではないか。
ただ、この話は、実は今、
「会社ぐるみのところで、私にお見合いの話が来ているんですよ。会社の存続にかかわるということで、その相手というのが、うちの会社のスポンサーのようなところで、いわゆる政略結婚のようなんですよね」
というのだ。
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