男女のうるさいくらいの笑い声。

色っけのある女の声。

酒と煙草の臭さ。

最悪の目覚め。

まだ、太陽が落ちていないというのにだ。

 

うるさいせいかは分からないが、

ズキズキとする頭の痛さ。

手を頭に当て起き上がろうとすると、

「おう、起きたか小僧」

というドスの効いた声。

 足を組んでベッドの足元に座りながら

キセルを吸っている男。

ゆらっと立ち、

綺麗な白髪を揺らし、

耳につけた鈴のピアスを、

シャランと鳴らしながら近づいてきたかと思うと、

「頭は冷えたか?」

とだけ。

 その綺麗なガーネットのような瞳に少し気を取られていたが、

すぐに布団から飛び起き、

今度は近くにあった花瓶を手にとり殴りかかる。

が、

すぐにまた鎮圧され、歯を噛み締めながら

「おめぇらのせいで!

殺してやる!」

といい、もがく。

すると

「俺は能楽燕だ。お前は?」

と冷静さと冷たさがある声で聞かれ、

何故か分からないが

 

「俺に名前は、ないよ」

 

と答えてしまった。

先程までの怒りが嘘かのように。

すると拘束していた手を緩め、

少し哀愁を漂う顔をし、

軽く少し息を呑み、

口を開き、

 

「そうか。

ならお前は、雲雀鴉だ。」

 

手を離し、

髪をかきあげ、

「ようこそ鬼釈迦に

これから俺のことは

頭と呼べ」

と言い、鴉に手を差し出した。

 

 なにかこの手を取れば終わることは分かる。

引き返すなら今。

だが

その手を鴉はそっと取ってしまった。

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