三つ目の糸


三つ目の糸


 一つ、

先程までとは打って変わって

静寂が訪れ、

空は、藍紫色の頃。

「今日は、事件が多いな」

と渋い声の男。

「まぁどうにかなるさ」

と、呑気にあくびが混じった声。

少し騒がしい声の中、

赤子の泣き声が響いた。

渋い声の男が、

泣き声のする方へ走っていった。

 

 廃墟ビルの中、一つの籠。

幸せそうな純粋無垢な笑顔。

その籠の近くに、一枚の紙切れが置かれていた。

『お優しいお方。この子を』

その紙を見た低く渋い声の男は、

そっと籠を持ち、

「今日からこの子は私達で育てる。

異論は無いな」

と、誰も断れないと知りながらも言った。

その考えを知ってか知らずか、

 

「わかっていますよ」

 

と言いたげに、

皆静かに祝福した。

椿の葉に付いた朝露も、

朝日もスポットライトの様に、

二人を祝福した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る