第8話
プレイヤーは一人じゃない
朝霧恒一の一日は、基本的に退屈だ。
大学の講義、学食の安い定食、レポートの締切。
どこにでもいる大学生の生活。
少なくとも、表面上は。
「眠そうだな、朝霧」
講義室で声をかけてきたのは、同じゼミの男だった。
背が高く、無駄に爽やかで、いつも余裕がある。
「そう見える?」
「見える。三日くらい寝てない顔」
図星だった。
惑星ボールの観測は、時間感覚を狂わせる。
ほんの数分のつもりが、気づけば夜が明けていることもある。
「最近さ、変なゲーム流行ってるって知ってる?」
唐突に、そいつ――神崎が言った。
「変な、って?」
「噂レベルだけど。招待制で、参加したやつの人生が変わるとか」
心臓が、わずかに跳ねた。
「人生が変わるって、大げさじゃない?」
「普通ならな。でもさ」
神崎は声を落とす。
「プレイヤー同士で、干渉できるらしい」
俺は、何も言わなかった。
ただ、頭の奥で警告音が鳴る。
プレイヤー同士。
つまり――俺以外にも、“持っている”やつがいる。
「まあ、都市伝説みたいなもんだけどな」
神崎は笑って、話を切り上げた。
だが、その笑い方に、ほんの一瞬だけ違和感があった。
何かを知っているような、探るような目。
講義が終わり、キャンパスを出る。
夕方の風が、やけに冷たい。
帰宅しても、すぐに惑星ボールには触れなかった。
代わりに、スマホを見る。
通知が一件。
《観測者チャンネル:新規接続あり》
名前は、表示されていない。
ただ、ランクだけが浮かんでいる。
《管理者階位:不明》
不明。
そんな表示、今まで見たことがなかった。
俺は、画面を閉じる。
今日は、触らない。
そう決めたはずなのに。
頭の中には、
あの未分類の群れと、
神崎の言葉が、重なって離れなかった。
このゲームは、
一人で完結するものじゃない。
――ようやく、その事実が
日常の側から、俺を殴ってきた。
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