第6話
星のかたち、人のかたち
惑星を眺めていると、不思議な感覚に襲われることがある。
遠いはずなのに、近い。
触れていないのに、分かる。
惑星ボールの内部では、三つの種族がそれぞれのやり方で生き始めていた。
風の種族は、小柄で、耳が長い。
骨格は細く、常に集団で行動する。
彼らは言葉を持たない代わりに、空気の流れや音の揺らぎで意思を伝えているようだった。
争いを避ける。
逃げることを恥だと思わない。
――生き残ることを、最優先にする種族。
大地の種族は、対照的だった。
岩のような皮膚、重い体、動きは遅い。
だが、彼らは地面に触れることで、多くを知る。
水脈、地殻の歪み、近づく危険。
仲間を守るためなら、身動きが取れなくなるまで立ち続ける。
滅びるときは、逃げない。
影の種族は、まだよく分からない。
夜にだけ姿を現し、昼は眠る。
数は少なく、集落も作らない。
ただ、他の種族の近くに、いつの間にか“いる”。
観察者。
あるいは、記録者。
そんな言葉が、頭に浮かんだ。
「……全然、同じじゃないな」
人間と同じだ。
価値観も、生き方も、全部違う。
それでも、同じ星に生きている。
俺は、ボールをそっと引き出しに戻した。
今日は、バイトの日だ。
コンビニのレジに立ちながら、無意識に客の顔を見る。
急いでいる人、疲れている人、無関心な人。
それぞれが、それぞれの事情を抱えている。
「ありがとうございました」
そう言いながら、ふと考える。
もしこの人たちを、
外から眺める存在がいたら。
効率が悪いとか、
無駄な争いが多いとか、
そう評価されるんだろうか。
――それでも、生きている。
帰り道、夜風が冷たかった。
アパートの階段を上り、部屋に戻る。
電気をつける前、暗闇の中で立ち止まった。
影の種族のことを、思い出す。
見ているだけ。
直接は関わらない。
それは、逃げだろうか。
それとも、覚悟だろうか。
《観測は継続されています》
いつもの通知。
俺は小さく息を吐いた。
「分かってる」
日常に戻っても、
俺はもう“ただの大学生”じゃない。
この星のことを、
この種族たちのことを、
知ってしまった管理者だ。
引き出しの中で、惑星ボールが淡く光る。
それは、
日常と非日常の境界線が、
もう消えていることを示していた。
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