第5話

管理者たち


《他管理者による干渉を検知》


その表示を見たまま、俺はしばらく動けなかった。


管理者。

つまり――俺と同じように、この惑星ボールを持つ人間が他にもいる。


考えてみれば当たり前だ。

こんなものが、一人にだけ渡るはずがない。


《管理者は複数存在します》


《干渉方針・介入思想は個体ごとに異なります》


無機質な説明が続く。


どうやら、この“ゲーム”にはルールがないわけじゃないらしい。

ただしそれは、勝敗を決めるためのものではない。


――人間の選択を見るための枠組み。


頭の中に、いくつかの例が流れ込んでくる。


ある管理者は、惑星を効率だけで育てる。

無駄な種族は切り捨て、争いを煽り、最強の文明を作る。


ある管理者は、文明を兵器にする。

星同士を衝突させ、勝った方だけを残す。


そして、

ある管理者は――途中で飽きる。


放置された惑星は、静かに滅びていく。


俺は、喉の奥が詰まるのを感じた。


「……そんなの、ありかよ」


《すべて許容されています》


その一文が、やけに重かった。


許されている。

つまり、この宇宙では――

それも「正解の一つ」なのだ。


画面が切り替わり、いくつかの反応が表示される。


――観測圏内に、他管理惑星を確認

――文明レベル:初期〜中期

――接触可能距離まで、推定数日


数日。


つまり、遠くない未来で、

俺の星は「他者」と出会う。


俺は、惑星ボールに視線を戻した。


森はまだ若く、川も細い。

種族たちは、それぞれの場所で小さな集落を作り始めている。


魔法はある。

だが、秩序も、言葉も、まだない。


――弱い。


はっきりそう思った。


もし、力を振りかざす管理者に見つかったら。

もし、争いを楽しむ誰かに目をつけられたら。


この星は、簡単に壊される。


《提案》


新たな表示が浮かぶ。


《文明発生を促進しますか?》


また、選択だ。


俺は、拳を握った。


他の管理者がどうするかは関係ない。

この星を、勝たせる必要はない。


でも――

生き延びさせる必要はある。


「……守れるくらいには、強くなってもらわないと」


それは、神の言葉としては、あまりに人間的だった。


惑星の中央で、三つの種族が、初めて同じ場所に集まり始めている。

偶然か、必然か。


そこに、火が灯った。


自然魔法による、最初の火。


文明の始まり。


そして同時に、

争いの始まりでもある。


俺は、息を吸い、次の選択肢を見つめた。


もう、引き返せない。


この宇宙には、

俺以外にも“神の真似事”をしている人間がいる。


その事実を抱えたまま、

俺はこの星と、最後まで向き合うと決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る