第二章 少年、帝に対面す
かぐや姫の昇天後、帝はかぐや姫との別れが受け入れられず、悲嘆の中で、これまでかぐや姫とやり取りした文を見返す日々を過ごしていた。
時候の挨拶、趣のある草花の話、送った歌への軽妙な反し。さらに読み込めば、自身がこの地上の人間ではないこと、いずれ月に帰る身であること、さらにそのための準備の協力を願いたいという内容も繰り返し書かれていた。
帝はこのような文を見ても、かぐや姫は不明なことを言い出して誘いを断るのが常であると聞き及んでいたため、まともには取り合わなかった。いつか心を開くだろうと、めげずに愛を込めて何度も文を送った。
今では、かぐや姫が文に書いていた話は真実であったとわかる。十五夜に天に上ったかぐや姫。翁に請われるまま
しかし、文を見返していると、気ががりな点がみつかる。文によれば、かぐや姫の従者に優れた者がおり、八方を見通す知恵を持ち、天人の技を理解し、いずれ天人がこの地に攻めてきた時に、必ずや力となるであろう、という。
かぐや姫が男を寄せ付けなかったのは、心に決めた相手がすでにおるのでは、と考えたこともあった。もしや、その相手こそ、この従者なのでは・・・と、嫉妬に近い感情が湧いてくる。
帝は、従者をこちらへ遣わすよう、竹取の翁へ命じる。周りの者たちも、ふさぎ込んでいた帝が以前の生気を取り戻す兆しのように思えて喜ばしく、急ぎ使者を出立させた。
かくして、目の前に現れたのがこの少年である。年の頃は十二、三。かぐや姫が従者の事を綴ったのは二年以上も前のことであったから、流石に、かぐや姫とこの少年が男女の関係というわけではないはずだ。
―――帝が口を開く。
「なぜここに呼ばれたのか、わかるか?」
帝が貴族でもない、ましてや宮仕えでもない庶民と直々に会うなど異例中の異例。周りの者からも、現人神である御方の振る舞いとして相応しくないものであると諫められたが、かぐや姫に対する執着が消えない帝は、直接話すと言って聞き入れなかった。
「かぐやのことだ」
「はい」
帝は少し姿勢を崩し、続けて少年に問う。
「かぐやから何か聞いておるか?」
「はい、天人がまたこちらにあらわれ、戦を仕掛けてくるやもしれぬと。よって、そのための備えをよくしておけと」
「その話か・・・」
帝は少し態勢を後ろにさげながら話し始める。
「訓練された二千の兵、天人にはまったく相手にされず、歯向かう気すら起こせなかったと・・・神通に立ち向かえるのか?」
「はい、かぐや様もまた天人であり、その技を残していかれました。それをもとに備えをすれば叶うかと」
「技・・・それは興味深い。しかし、天人というものが仏や神の化身であるならば、逆らうことは罰が当たるものではないか」
「かぐや様がおっしゃるには、天人も人であり、神仏ではないと」
「・・・ならばその、天人であるかぐやがなぜこの地に現れた?」
「それについては少し長く、また、信じがたい話とはなりますが・・・」
「よい」
少年は、かつてこの地にあった時のかぐや姫の様子や、かぐや姫から伝え聞いたという話を、詳細に語り始めた———
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