第四章 かぐや姫、宝物を欲する
「なんと、そのようなことが・・・畜生ども・・・余のかぐやを処刑などと!さらには穢き地などと!」
「天人はこの地を、そのように呼んでいるようです」
帝はふと思い当たり、
「天人は寿命すら意のままであるとのこと。しかし、赤子に戻す処置が不完全であったためか、かぐや様はほどなくして以前の姿を取り戻しました」
「確かに、すぐに大人の姿になったとは聞いていた。そのような油断があるとは」
「実は、かぐや様に内通者がいたようです」
「ほう・・・」
「かぐや様が発見された場所には、かぐや様の助けとなるべく、天人の技を宿す道具も置かれていたとのこと」
「天人の道具」
「しかし、その大半は、
「なんという不覚だ」
傍らでこれを聞いていた貴族たちが、たまらず帝に声をかける。
「お待ちください!このような話を・・・」
「良いではないか。信じがたい話であると、初めに申しておったぞ」
「しかし・・・」
「一つよいか。以前にかぐや姫へ、
「はい、その時の話につきましても、かぐや様より、どのようなものであったかと、聞いております」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
かぐや姫昇天から、十年前―――竹取の翁の屋敷
かぐや姫は、部品の回収に奔走し、ついに装置を組み終わっていた。この装置には、解析機能や演算処理機能、さらには通信機能も備わっており、月からの情報を得られる。
早速通信を受信した。
内容は、月の謀反軍によるこの地への侵略計画に関するものであった。かぐや姫の顔が青ざめる。急ぎ月に戻り、企てを止めなければならない。が、この地に降りて十余年を過ごしながら、帰還に向けた作業は思うように進んでいない。
これまでかぐや姫は、他文明への不干渉を貫いていた。発展途上の文明に干渉すると、かえって文明自身の発展意欲を妨げ、その文明を段階的な破滅に追い込んでしまう。そのような先進文明依存症ともいえる過ちが、これまで多くの星で繰り返されてきた。
そのため、かぐや姫は協力者を作らずに、たった一人で、宇宙船の作製や資源の調査、回収を続けていた。
だが、今や、状況は変わった。この地が侵略され文明自体が滅亡してしまえば、元も子もない。
最も必要なことは、この地で志のある者たちに協力を仰ぎ、さらには王家に友好的であった同盟星にも協力を要請するなど、抗戦の準備をすることではないのか・・・
その頃、成長したかぐや姫の美しさの噂が広まり、竹取の翁の屋敷には大勢の男たちが、かぐや姫を妻にしたい、一目見たいと集まっていた。
しかし、かぐや姫のいる離れは厳重に垣根で囲われていたため、誰もその姿を見ることはできなかったから、集まる人も段々と減っていき、最終的には、都でも
その公達たちは、凍える寒さにも、照りつける暑さにも負けず、食事も忘れて恋焦がれた。恋歌を送ってみるが、一向に変化もない。
ある時は竹取の翁を呼び出して、「娘を我にください」と手を擦り合わせてお願いしたが、「思うようにはならないのです・・・」としか返ってこない。それでも、「いくら何でも、結婚しないことなんてないだろう」と、望みをかけていた。
そんな折、翁がかぐや姫に話を持ちかける。翁はこれまで、かぐや姫が神仏の化身であると恐れ多く思い、婚姻を勧めることはしなかったが、公達があまりにも熱心に、しつこくお願いしてくるもので、一度、かぐや姫に話をしてみようと思い立ったのだ。
正直、高貴な方とかぐや姫が婚姻することで、自分も官位にあやかれるのでは・・・という下心もあっての行動であった。
「少しよいか・・・あなたが仏様、あるいは神様の化身ではと、十分わきまえてはいるのだが、そのうえで・・・」
「はい」
「あなたを我が子と思い、ここまで大切に大切に育ててきた。そこでどうか、頼みを聞いてくれないものか」
「何でしょうか。お父様のおっしゃることなら」
「ありがたいことを言ってくれます。我も七十を超え、今日明日の命とも分かりません。この世の人は、男は女とあう、女は男と合うものです。。その後で家も栄えるのです。どうしてそのようなことなしにいられましょうか」
「あう?」
「この翁が生きている限りは、このように一人でもよろしいでしょうが、いつまでもこのままとはいきません。もう何年も、熱心に屋敷にお越しになっている方々がいます。この方々に何を伝るべきか・・・お決めになって、お会いなさいませ」
「ですが・・・状況は良いとは言えず、事情も知らぬままでは、後々にこんなはずではなかったと、お互い悔いが残ることとなります。例えこの地で賢いとされている方であっても、深い志が無ければ難しいかと・・・」
「確かにどんなお相手かも知らぬままでは選びかねるでしょう。では、どんな相手がよいと思うのか」
「・・・わかりました。皆様の志がどれほど深いか、その方々の中で、求める品を持参してくださる方と命運を共にしたいと思います」
「おお。それは良い考えだ」
かぐや姫は数枚の紙を持ってくると、翁の前で床に広げた。翁はただただ、茫然とそれを見つめている。
「まず一人目の方。純白の石を砕いて粉にし、極めて高い熱で焼き固めて作ります。真っ白に美しく光り、軽くても壊れにくい」
「ま、待ってくれ・・・なんと?」
「では、それぞれ詳しく書き写した
「おお、それは助かるな・・・いやいやいや、それより、この絵図は何なのだ?」
「ああこれは・・・船のようなもの、でございます」
「船など作ってどうするつもりだ?」
「それは、追々・・・次は、東の海の果てにある島の海岸にて採れる黒石を、高温で溶かし得られる、銀に輝く、軽くて丈夫な、朽ちることのない素材」
「東の海の銀・・・船の材料のために、海を渡れというのか」
「三人目、炭を極めて細く、糸のごとくにしたるものを、幾重にも織り、羽衣のごとく軽やかにして丈夫。火にも燃えません」
「・・・燃えない布」
「四人目、海の底深くに転がる、黒き玉。内部は赤や青、黄色や白の金などが含まれます」
「海の玉・・・」
「最後は・・・これは細かな細工に向くもので、熱さにも耐え、ひかげによる病や災いも守ります。黒、赤、白が混ざる燕のような色合いの石」
「・・・いや、本当に・・・何のことやら・・・この国にある物でもありません。このように難しいことをどのように申しましょうか」
「それならば、直接この図を用いて皆様にご説明いたしますが」
「いやいやいや。そういうわけにはいかないのです」
「なぜ?」
「世の習わしだからです・・・わかりました、ともかく申しましょう」
この時代、求愛する男性に女性が直接会うとなった時点で、相手を受け入れたということになりかねない・・・それを一挙に五人も相手にとは、もってのほかである。
そもそも、田舎者で額もない自分がわからないだけなのかもしれない。この品物の数々も公達ならすぐに思い当たるものでは、ならば、伝えてみたほうが早いと、翁は考えたのである・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます