【第二部:展開】
激突!斬鉄剣 vs. 義体くノ一
シデンの一閃は、カエデの特殊合金製の義手を狙った。しかし、カエデは義手を盾とするのではなく、驚異的な反射速度で後ろに飛び退き、同時に両手から極細のナノワイヤーを射出した。ワイヤーは電撃を帯びており、触れたものを焼き切る。
「過去の剣術など通用せん。私の義体は、ナノカーボン繊維の超高密度アレイで構成されている!」
カエデは無感情な合成音声で言い放つ。彼女は、信久が未来のデータから復元させた、最強の戦闘用義体だった。
シデンはナノワイヤーの網を、斬鉄刀の側面で叩き切るのではなく、時空振動波を纏わせて分解した。ワイヤーは空中で塵となり、電撃は消失する。
「そのナノ技術も、時空の壁を超えてきた『斬鉄』には敵わない。お前の動きは読みやすい。反応速度は速いが、思考回路は単調だ」
シデンは一歩踏み込む。彼の足元が僅かに沈み込むのを見たカエデは、即座に背中のブースターを起動させ、城壁へと跳躍した。
「逃げるか!」
「否!奇襲だ!」
カエデは城壁を蹴ると、超高速でシデンに肉薄した。彼女の狙いは、シデンの刀を弾き飛ばし、組み付いて内部回路をショートさせることだった。彼女の拳から放たれる衝撃波は、周囲の建物の壁土を剥がすほど強烈だ。
シデンは刀を水平に構え、その場に留まる。カエデの拳が彼の顔面を直撃しようとした瞬間、シデンの体が光の粒子のように揺らいだ。彼は自身の存在する時間軸を僅かに遅らせる『時差走法』を発動させていた。
カエデの拳は、実体のないシデンの残像を虚しく叩いた。その間隙を突き、シデンは未来の技術を応用した無音の『音速の居合』を放つ。斬鉄刀はカエデの肩を掠め、装甲を深く抉った。
「ぐっ……!」
初めて苦痛の唸りを上げたカエデは、体勢を崩して瓦屋根に激突する。彼女の義体は驚くべき速度で自己修復を開始したが、シデンの攻撃の正確さに警戒を強めた。
「お前は何者だ?この時代に属さない力だ」
「時空の修正者。お前の主人の、歴史からの削除が私の任務だ」
シデンとカエデの激しい戦闘は、城下に騒乱をもたらしていた。しかし、電脳大名・信久にとって、それは取るに足らない騒音でしかなかった。
電脳大名、美濃へ動く
那古野城の管制室。信久はゲンナイの完成させたばかりの『完全自律型迎撃砲台(コードネーム:大筒丸)』の最終調整を終えたところだった。
「ゲンナイ、この迎撃砲台の精度は?」
「信久様、ご安心ください!未来の衛星観測データを基に設計した照準システムを搭載しております。美濃の斎藤軍の兵糧集積地を、誤差一尺で狙い撃てまする!」
ゲンナイは誇らしげに胸を張った。彼は既に、この時代に存在しないはずのGPSに相当する座標データを、信久のAIから受け取って解析していた。
「誤差一尺でも大きい。AIの予測では、斎藤軍は今夜、我々の進軍ルートを塞ぐべく、峡谷に兵力を集中させる。ゴンスケ、反重力ホバー駕籠の準備は?」
「すぐにでも出撃可能です、信久様!我々のホバー駕籠なら、山道を行く斎藤軍の五倍の速度で移動できます!」
ゴンスケは、信久の奇想天外な作戦に内心冷や汗をかきながらも、忠実に指示を遂行する。駕籠の形をしたホバークラフトに乗り込んだ信久は、管制室のゲンナイに最後の指示を与えた。
「カエデが城下で妙な浪人と揉めているようだ。奴は時空管理局の犬だろう。無視しろ。歴史改変の鍵は、この時代の人間には理解不能な速度と火力だ」
信久は冷徹に言い放ち、ゴンスケの操縦する反重力駕籠で出陣した。
谷間に轟く未来の砲声
美濃国境の深き谷間。斎藤軍の兵士たちは、来るべき織田軍との決戦に備え、必死で陣地構築を進めていた。
「織田め、まさかこんな夜陰に乗じてくるとは思うまい!」
斎藤軍の指揮官が安堵したのも束の間、谷の遥か上空から、異様な唸り声が響き渡った。
「あれは何だ……?鳥か?いや、駕籠のような形をしているぞ!」
夜空を低く、驚異的な速度で滑空してきたのは、信久のホバー駕籠だった。駕籠の底面からは、強烈なサーチライトが谷底の斎藤軍を照らし出す。
「ターゲット確認。ゲンナイ製・対重力シールド起動!」
信久が操作パネルを叩くと、駕籠の周囲に青白い光のドームが発生する。斎藤軍の弓矢や火縄銃の弾は、シールドに触れた瞬間に勢いを失い、地面に落ちた。
「弾が当たらぬ!あれは悪魔の仕業か!」
混乱する斎藤軍の頭上、那古野城からはるか遠距離に設置されていたゲンナイの大筒丸が火を噴いた。
ドォン!という轟音と共に、従来の火薬とは比べ物にならない閃光と衝撃波が、谷の入口に集中する斎藤軍の兵糧庫を直撃した。それは、未来の技術を転用した高出力プラズマ弾だった。
一瞬にして兵糧庫は蒸発し、谷間を強烈な熱風が吹き抜ける。この一撃で、斎藤軍の士気は完全に崩壊した。
「全軍、突撃!勝利はすでに決した!」
信久はホバー駕籠から降り立つことなく、美濃国境を突破した。わずか一刻の内に、美濃攻めの第一段階は完了したのである。
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