第10話 アルベスタ教の騒ぎ
魔王が王太子の犯罪を暴いたその後、王城の騒ぎを他人事のように、アルベスタ教の本部はいつもの夜を迎えていた。
教皇の居室から、隠し通路を使ったその先の地下の隠し部屋に、下卑た笑顔を浮かべたブ…いや教皇がやや狭い通路を苦しそうな体勢で降りて行った。
「ぐふふ…また今日もたっぷり可愛がってやろう…完全に壊れたら、コレクションルーム入りだがな。
コレクションルームも今度広げるとするか。」
そこには死んだ目をした獣人の子供が数人、鎖に繋がれていた…
ドンドンドン!
その日の深夜、アルベスタ教本部のドアが叩かれる。
「国王陛下の命により、火急の用により教皇との面会を希望する。お目通り願いたい。」
ドアが開くと騎士が10人ほどが乱入してきた。
「教皇の居室に案内せよ。」
有無を言わさぬ発言に、対応した修道士が怯えながら案内をする。ドアをノックし呼びかける。
「教皇様、騎士様がお見えです。国王陛下からの御用のようで…」
返事がない。
「仕方ない。ドアを破らせてもらう。」
「まっ…待ってくだ…」
ドカンッ!
騎士がドアを蹴破ると、そこには服装に乱れがあるまま隠し通路から出てくる教皇の姿があった。
「そんなところに隠し部屋かね?
その部屋を改めさせてもらおうか。」
「な、何を…」
狼狽える教皇と、教皇の部屋の隠し部屋を知らなかったため呆然とした修道士を残し、約半数の騎士が隠し通路の先に進む。
「隊長!獣人の子供たちを3名発見しました!かなり衰弱していますが、まだ生きています。
っ!…奥に氷漬けになった獣人の子供の死体が数え切れないほど…」
逃げ出そうとした教皇は騎士により押さえつけられていた。
「言い訳は後で聞こう。まずは王城の取調室に来ていただろうか。」
項垂れる教皇を2人の騎士が引いていく。
「今から、ここはアルベスタ国王による監視対象となる。捜査が終了するまで、ここにいる全員に監視がつく。許可があるまで自室から出ないように。」
「…ワシはアルベスタ教の教皇だぞ。王太子から処罰されたくなければ解放する方が得策だぞ。」
王城の取調室で、不敵にニヤリと笑いながら教皇が言う。
「残念だな。今、この国は王太子が廃嫡、除籍となったので、王位継承順位が変わったところなんだ。ご存知なかったかな?」
「なっ!?」
「そして、ただの犯罪者となったグースが、貴方に違法に奴隷にした者たちを提供した、と供述していまして…心当たりはありますかな?
あ、そうだ。そういえば先ほど地下の隠し部屋にいた獣人の子供たちは、一体どこから連れてきていたんですか?人族至上主義のアルベスタ教本部に亜人がいると言うのは、どのように説明なさるのかお聞きしたいですな。」
「いや、あれは奴隷であって…」
「おや?確かアルベスタ教は奴隷反対を声高々に公言していましたよね?」
「そ、それは人族に限る話だ!」
「ふむ…そう言えば、亜人奴隷には反対していませんでしたか。
でも奴隷に関しては、王国法では購入に際しては届出が必要なはずですよね?違法奴隷防止のために法整備されていたはずですが、教皇の貴方が奴隷購入されたという届出は見ていないのですが…?」
「い、いや、それは王太子殿下からの寄付であって…」
「“元”王太子、ですね。
王国法では、譲渡の場合であっても届出が必要だったはずですが?」
特に荒々しくもなく、丁重に、事細かに冷静な取り調べが進む。
「いや、届出を忘れていただけで…」
「そうですか。10年も忘れてるなんて、誰も何も言わなかったんですかね?立派な脱税行為になるんですが…国教の教皇が脱税と言うのは、アルベスタ教として致命的な失態になると思うんですが、誰もそれを進言しなかったと言うのは大丈夫なんでしょうか。
まぁ、そもそも亜人奴隷があの部屋にいること自体、本部で生活している方々は誰もご存知なかったようなので、指摘してくれる人が出たら、それはその秘密を知ってると言うことになるんで、矛盾してしまいますね。
それでも、何人かの方々はご存知だったのでしょう?貴方が亜人奴隷を提供されていたようですし…
他に亜人奴隷を持った方々は何人ほどいるんですかね?その辺、素直にお話いただけると、貴方の処遇について考えることができるようになるんですが…」
「いっ言う!だから見逃してくれ!
5人いる枢機卿のうち、3人には定期的に提供している!それで教皇選出やアルベスタ教の方針決定に協力することになっているんだ。あとは、本部付きの司教1人にも提供して、王太子との連絡係を任せている。
こ、これでワシを助けてくれ!」
「ご協力ありがとうございます。それで、その4人が今どこにいるかご存知ですか?」
「ああ、枢機卿の3人はそれぞれの管轄に、司教は王都にある司教の自宅にいるはずだ。彼は本部へは通いで来ているので…」
「それでは、詳しい情報は彼に説明してください。私はその司教を捉えて確認します。貴方のおっしゃることが正しければ、司教の発言と一致するはずですから、何も問題はないでしょう。」
そう言って、部下に任せた騎士は司教を捕縛に向かうのであった。
「いやー、自分で全部の罪を白状してくれると、正確に罪状を把握できて、刑を考えるのもラクで良いなあ…」
そんなことを呟きながら…
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