第8話 二人の安堵と王城の騒ぎ
「申し遅れました。ワタシは案内役に選ばれましたノーマと申します。よろしくお願いいたします。」
そう言って、二人にだけわかるようニコリと笑ってウインクして見せた。
二人は一瞬驚くと、途端に緊張を解いて安心した表情を見せた。
「さ、回復薬をご使用ください。」
二人は回復薬を使い、傷を治した。
「さて、夜間ではありますが、ここでは不安になると思いますので、ワタシの方で用意した馬車に乗っていただきたいと思いますがよろしいでしょうか?
国境を越えるところまでは、急いで移動しておきたいと思うのですが…」
「そうですね。少なくともこの宿にはいたくないですし、護衛騎士が信用できなくなりましたから。」
「ま、待ってください!さすがに夜間の移動は危険を伴うので避けていただけると…」
護衛騎士から声が上がる。
「ですが、貴方達がお二人を危険に晒したんですよね?」
そう答えると「ぐっ…」と言葉に詰まる。
「とは言え、そちらの立場もわからなくはないですから、間を取って、ワタシの確保した宿にお二人だけ移っていただき、明日の朝出発ということでどうでしょうか?」
「そ、それは…」
「お二人からしたら、護衛騎士がいる方が安心できない状態になってしまっていますよね。」
無言で頷く二人。
「なので、護衛はワタシが対応いたします。魔王様からは決闘場まで無事に送り届けることを厳命されていますので、その点は保証させていただきます。
どうですか?勇者様、聖女様。」
「ボクはそれで良いよ。」
「私もそれで良いです。というか、その方が良いです。いつも胸をジロジロ見られてましたし、護衛騎士の方々がいない方が安心できそうです。」
この聖女の言葉が決め手となって、こちらで確保してあった宿に移動する事になった。
数件離れた程度ではあるが、この宿のワンフロアを借り切ってあった。
こちらの宿に移動すると、ベッドにダイブするカオル。
「あー、安心する!あの護衛騎士たち、隊長以外は信用できなかったのよね。宰相と王太子が選んでたから。」
「でも、ワタシも男ですよ?同室になりますが良いのですか?」
「魔王として、決闘までは約束を守ってくれるんでしょう?」
アリスが答えた。
「でもさ、部下とかが来るかと思ったのに当人が来たのは驚いたよ。」
「そりゃ魔王になったばかりですし、『最弱』ですから、部下がいないんですよ。」
苦笑混じりに返す。
「それでも、あの場にノーマが来てくれて、ものすごく安心したの。お礼を言ってなかったね。ありがとう。」
「私からもお礼を言います。ありがとうございます。」
「いえいえ、たいした事じゃありませんよ。今晩は、もう遅くなってしまいましたが、安心してゆっくり休んでください。明日の移動は少し距離もありますから。」
「わかった。久々にぐっすり眠れそう。本当にありがとう。」
――――――――――――――――――――
その頃、アルミナ王国の王城は、修羅場になっていた。
「どういう事だ!グース!この城の地下に奴隷を集めていたのは知っていたが、全部正規の奴隷だと言っていたな?ガッソの自白からすると、明らかに違法奴隷、それも帝国に不法侵入しての掠奪行為だろうが!
しかもその奴隷の扱いが非人道的なものだと全世界に伝えられてしまっただろうが!」
「それの何が問題なんですか、父上。人族以外なんですから、奴隷にしようがその奴隷にどんな扱いしようが問題ないでしょう。」
「馬鹿者!王族が主導して他国の国民を違法に奴隷にする、ということになれば、自国民も法を守らなくても良いという免罪符も同じだろうが!それどころか我が国の民を違法に拉致して奴隷化しても良い、と言っているのも同じだぞ、分かってるのか?」
「何を言ってるんですか。平民どもと王族を同列に扱うなんて。我々こそが法であって、平民とは異なるのですよ。」
「近衛!こやつを捉えて地下牢に入れろ!
廃嫡し王族籍からも除籍して平民にする!今この時点をもって、ただの犯罪者だ!牢に入れておけ!
その上で、過去にどの程度の犯罪を犯していたか、徹底して暴け!こやつに協力していた者のリストも作成せよ!」
国王の叫び声が響いていた。
「騎士団長はいるか!?」
「ハッ、ここに。」
「まずはグースというこの国の癌に対する尋問を行え!
あと宰相はグースに肩入れしていたはずだ。
今回の件、宰相も関わっている可能性がある。宰相周辺を重点的にお主の方で調査せよ。」
「ハハッ!…王妃様の方はどうされますか?」
王太子が我儘放題なのは、王妃が甘やかしているからだ、というのは王城内では誰もが知る事実だった。
「そちらも調査せよ。関わっているようなら容赦しなくて良い。今回の件、全世界に知れ渡ってしまっている。ヘタに隠し事をする方が致命的だ。徹底的に洗い出せ!」
こうして、アルミナ王国内では貴族の不正が次々と暴かれる事になっていく…
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