第6話 護衛

「ああ、聞こえたよ。迎えがくるだろうから、それまで待機だね。」

 カオルの応えに、扉の向こうでチッ!と舌打ちが聞こえる。二人とも眉間に皺が寄る…せっかくの美人が台無しだぞ。

「じゃあ、ワタシは即座に迎えを手配しよう。それまでに襲われる事が無いように気をつけて…と放置するのは可哀想だな。

 常に二人で居てくれれば、いざという時に不届者を処罰できるようにしておくこともできるが、その代わり二人のプライベートも監視するようになってしまう。どちらが良いかね?」

 二人は顔を見合わせる。そりゃ悩むだろう。ヒソヒソ声で相談し始めた。

 まぁ、実際のところマーキングしてあるから、どのみち状況は把握できるわけだが、この際公認してもらおうじゃないか。

 二人が自分の意思でこちらに信用を傾けてくれるように祈りつつ相談の結果を待つ。

 18歳の乙女が、自分のプライベートを見ず知らずの男に知られるのと、貞操の危機それも陵辱される危機と、そりゃ悩むはずだ。あとはどちらが信用できるか、だよな。

 少し待つと勇者が代表して宣言した。

「ボクたちを守って。」

「わかった。では、迎えが来るまで待っていてくれ。信用できる者を使いに出そう。危険が迫った時は大声を出してくれ。即座に対処しよう。では、また。」

 そう言って幻影を消す。


 …ついで、だ。コイツら潰すか。

 護衛として扉の前を守っている二人を観察してみる。傲岸不遜が服を着たようなのが勇者を狙ってるやつか。コイツの耳元に囁きだけ残してやろう。

 俺のスピードなら、即座にここに来れるしな。

 

『明日には魔王の迎えが来るだろうね。そのあとは勇者も聖女もお別れだ。』

 

 !!男は目を見開いて周りを見回している。

「どうした!?」

「い、いや、なんか居たような気がしたんだが、気のせ…い、いや!勇者サマと聖女サマに何かあったらマズい!部屋の中に入って護衛すべきだ!」

「おい!何を言ってる!?」

「何かの気配を一瞬感じたんだ。勇者様と聖女様に何かあったらマズいだろ!」

「だからと言って、部屋に入って護衛するなんて、認められないだろ!」

「うるせえ!今晩しかチャンスはねぇんだよ!お前が協力しねえなら、二人とも俺が楽しませてもらうぜ!」

 ドカッ!もう一方の護衛を殴り飛ばし、男は扉に手をかけ強引にこじ開けた。殴り飛ばされたもう一人は呻き声をあげ立ち上がれないでいる。

「ぐふふ…今晩しかチャンスはないんだ。害するわけじゃねえ、女の悦びってのを教えてやるだけだぜ?」

 突然入ってきた護衛のはずの男が血走った目をしているのを見て、二人の少女は思わず声を上げる。

「ひっ!」

 勇者と聖女は手を取り合って震える事になった。部屋の中だったこともあり、武器は手元にはない。鎧もつけていない。完全に無防備だった。

 男はにじり寄り、左手を勇者に伸ばし手首を掴んだ。

「大人しくオレのいうこと聞いてりゃ、聖女サマには手を出さねえよ。オレ様の性欲処理してくれや。なぁ、勇者サマ?」

 ガクガクと震えて声の出せないカオル。顔面は蒼白だった。

「た、助けてー!誰かー!」

 アリスが叫ぶ。

「誰も来るわけねぇだろ。黙ってろ。」

 男は右手でアリスに平手打ちした。

「う…あ…」

「アリス!…お前!何をするんだ!」

「うるせえ!お前は今からオレの性欲の捌け口になるんだよ!大人しく股開いてりゃ良いんだ!」

 カオルに襲い掛かろうとした途端、男の背後から声がした。

「二人を害する者には相応の罰を、という魔王様の言葉は聞いてなかったのですか?」

 

 そこにいたのは見たところ、二十歳前後のやや華奢な青年だった。

「なんだあ?テメェは!」

 青年は恭しく右手を左胸にあて礼をする。

「魔王様から派遣されました案内役です。勇者様と聖女様をご案内すべく参りました。」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る