第3話 魔王、勇者と聖女に会う

「とりあえず、一度会って話をしてみるか。」

 まずは勇者と聖女の居場所だが…国境の町にいるようだ。

 まぁ、そうだよな。先代魔王の侵攻は回避できたかもしれないが、新しい魔王の出方がわからない以上、国境の町で待機しつつ情報収集だろうな。

 で、二人が泊まっている宿に出向くのはいいが、二人がどう考えているかわからない以上、顔は隠しておきたいな。あ、護衛騎士が廊下で見張ってるのか。護衛には会いたくないな。直接幻影を飛ばして話すことにするか。そうすれば、いきなり攻撃されるようなことになっても大丈夫だからな。

 比較的近くの別の宿を確保し、防音の魔法をかける。顔は隠しておきたいので、仮面を付けてから幻影を飛ばす。

 二人の滞在する部屋に仮面を付けた俺の幻影が突如出現した。

「だ、誰!?」

 口の前に人差し指を立てて大声を出さないようにゼスチャーをしてみる。二人は顔を見合わせて、不安気ながらも頷いてくれた。

「はじめまして。新しく魔王になった者です。勇者と聖女のお二人と話をしてみたくて直接会いにきました。」

「え?魔王?」

「魔王の証を見たいですか?」

 服をたくし上げ、背中を見せる。左の肩甲骨の下あたりに魔王の証が浮き出ているはずだ。

 魔王の証も勇者の証も聖女の証も認定されたときに体の何処かに勝手に浮かび上がる。勇者は右の手の甲に、聖女は服に隠れているようだ。俺の場合は背中側だが、証が浮かび上がるときに熱を持ったので、ここに証が出たな、と自覚できている。

「ありがとう。魔王だと理解できたよ。」

 勇者の声で服を戻して前を向く。

「それで、ボクたちに話って、どんなこと?」

 勇者はボクッ娘らしい。

「実は戦争を回避したいのです。戦争を回避したくて、前の魔王を倒したら、ワタシが魔王に認定されてしまいまして…

 魔王の役割は『全ての種族を統べるもの』ということらしいので、今までの魔王が人族を統べるために力による支配を目指したことも理解できたんですがね。それでは戦争が回避できないし、最終的にワタシが討伐されるのも避けたいので、良い方法がないか相談に来たんですよ。」

 正直に言ってみる。

「『全ての種族を統べるもの』か…じゃ、人族含めて統率できれば使命を果たせるってことなんだね?

 ちなみにボクの使命は『勇気を持って、世界に平和をもたらすもの』となっていて、魔王を討伐することが使命ってわけじゃないんだ。だから魔王が代替わりしたワールドアナウンスを聞いて、少し悩んでいたんだ。」

 聖女がその先を引き継ぐ。

「私の使命は『慈愛を持って、全ての種族に平穏を与えるもの』なんです。だからカオルと二人で『勇者と聖女が魔王を倒す必要があるんだろうか?』って話していたんです。」

「それなら、三人の認識としては『魔王が勇者に倒されなくても、それぞれの使命は果たせるはず』ということで良いかな?

 あとはどうやって実現するか、というところだけど…」

「アルベスタ教は、『女神は人族のみの神であり、人族だけを祝福している。』と言っているけど、女神からの使命を考えると、ボクはその教義が間違ってると思うんだよね。だけど王国の国教になっているから、そんなこと言うと異端にされちゃうし…その点でも悩んでいたんだ。」

 そうか、勇者もアルベスタ教の教義に疑問を持っていたんだな。じゃ、ここで爆弾投下しておくか。

「そういえば、我が国の国境近くの街では、度々女子供が人さらいに攫われるということが起きていて、調べた結果、王国で奴隷にされていたってことがあるんだが、二人はその事実を知っているかな?」

 知らなかったようだな。聖女は口に手をやり目を見開いているし、勇者も絶句している。

「更にいうと、その奴隷を酷使したり虐待しているのは王太子をはじめとした高位貴族だと言うのも付け加えさせてもらおう。」

 さすがにショックが大きすぎたか?だが、この事実を伝えずにこの先の話を進めるのは無理がありそうだ。

「だからワタシとしては、アルミナ王国の国王とアルベスタ教の教皇が結託して人族至上主義を徹底、亜人というべき我々の仲間を奴隷にしているのではないかと思っている。だから人族との戦争は回避したいが、その悪環境を打破したいとは思っている。」

 二人はしばらく呆然としていたが、状況を咀嚼できたのだろう。勇者は決意の籠もった目を向け

「わかった。協力しよう。実現方法はあとで考えるとして、最終目標は『アルベスタ教の教義の間違い是正と、アルミナ国内の不当な奴隷の解消、関係者の処罰』で良いね?」

「そうなるな。後はワタシたちが協力して平和的に実現した、というのが明確にできると戦争も回避できるし、双方の国で蟠りが残らないんじゃないか?」

「そうですね。それは助かります。あの王太子に嫁ぐなんて絶対嫌だったもの。」

 嫌悪の籠もった目で言う聖女。

 ここに、魔王と勇者と聖女の運命共同体が誕生したのだった。

 

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