第11話

8月10日早朝、第四艦隊の裏切りの一報を受けた司令部は、クレドの中でも戦力に劣るイシス基地を先に叩くため、すでに火星付近に展開していた宇宙機動打撃軍、戦艦オメテオトルを始めとする第102戦隊を向かわせた......


クレド基地上空100km


『ブースターユニット装着、ゲート開放、第1小隊発進準備!』


戦艦オルテオトルのハンガー内、管制官の声が響き渡り、エレベーターに載せられたブースターユニット装備のドワッゼⅡが、カタパルトデッキへと上る


コクピットのインターフェースを操作、ディスプレイの表示がAI制御に変わり、脚部をセット、射出準備を完了させると、カウントが始まる


レッド、イエロー........画面右上で信号が順に点灯してゆく


そして最後のグリーンに光が灯ると、発進を知らせる警告音がコクピットに鳴り響く


『ディガー1発進!グッドラック!』


管制官の声と共に、機体はカタパルトで加速、高速で射出され、2番、3番デッキからディガー2、3も続く


コクピットの電子計器が時速520kmを表すと、手動制御に切り替わり、ブースターユニットのスラスター出力を上げ、亜音速域まで加速する


AMS用ブースターユニットは、スクラムジェットエンジンを搭載した無人航空機の一種であるが、重力下、無重力問わずあらゆる環境での飛行が可能であるため、軍で広く採用されている。しかし戦闘時、搭載されたAMSの機動が制限されるため、敵機とコンタクトした際には、ユニットを分離するという使い捨て兵器として扱われることも多い

そもそも、宇宙空間の戦闘では、増槽の使用で十分であるという否定的な見方も多く、現に2世代機の多くは最初から増槽が搭載可能な設計、またはそのような改修が加えられていた


第1小隊に続き、第2、第3、第4小隊も発進し、加速を終えると編隊を形成し始める


左右には他中隊が展開、総勢3個中隊でイシス基地へと侵攻していく


『ディガー1より中隊各機へ、基地まで20km、ブースター分離。』


無線通信での指示に続いて編隊各機は脚部からブースターを分離、機体のスラスターに点火し、高度を低空まで下げる


『オルテオトルよりAMS部隊各機。こちらのレーダーには敵影なし。電子妨害なども見受けられない。』


母艦のレーダー士官から通信が入る


『こちらも敵影なし。基地へ侵入する。』


部隊からの通信を受けた艦長は、


『了解、SSM発射!』


CICの砲手に指示を送り、船体側面の発射管からSSMを発射する


飛行を開始した大型巡航ミサイルは、火星の起伏を這いながら基地へと接近、ゲートの両端に着弾、起爆、その重い扉は崩落していった


『インパクト!着弾確認、侵入する、続け!』


ディガー1の指示に、編隊を崩さず、崩落したゲートから降りていく


『やけに静かだな......地下でうずくまってるのか?』


パイロットのひとりがこぼす


コクピット内、センサーがディスプレイで目まぐるしく索敵するが、敵の反応はなかった


そのまま中隊は、明かり一つないAMSハンガーへと到着する


機体のライトを灯し、目視での索敵を開始する


そこで、中隊長はあるものに気づいた


OD色の箱型のものがそこらじゅうの壁や床に貼り付けてある


『こいつは....!全機、退________』


が、遅かった


箱が炸裂、ハンガー内に轟音が鳴り響き、ゲート中の通路にいる部隊は異常事態に気がつくも、すでに爆炎がこちらへと昇り上げてきていた


『クソッ退避しろ!全機撤退!うわぁッ』


他中隊も無線で退避の命令を送るが、すでに遅く、何機ものドワッゼⅡが爆炎に飲み込まれていった


『撤退だ!急げ!』


数機がスラスターを最大で吹かし、地表へと上がろうとする。


崩落したゲートは目の前だった


が、


爆発音が響き、ゲート周りの岩盤が崩落、内部へと落ちていく


『何!?クソッ......うおっ....』


パイロットが下方を見ると未だこちら側に業火の如き炎が昇ってきていた


それに気を取られ、落下してきた岩石と機体が衝突、彼らは炎の中へと消えていった


『第一中隊、応答ありません!』


『第二中隊応答なし!』


オルテオトルのCICで管制官の緊迫した声が響き渡る


「これでは.......地表で警戒していた第3中隊以外は......おそらく......」


艦長は両手を握り、下を俯いて震えた声で呟いた

その沈黙は、この作戦の結果を意味しているようだった


36機出撃、未帰還機23機


第102戦隊は、これはただの内紛ではなく、戦争なのだと、この犠牲を見て痛烈に実感したのであった

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