第10話

『ヴェルト火星方面軍イシス基地駐留部隊は、「クレド」を名乗りヴェルト政府に対して徹底抗戦を宣言しており、これに対してヴェルト政府は近隣の基地へ鎮圧命令を発令するとの見込みで.........』


ニュース番組を見ていた少佐は、リモコンを手に取り、部屋のテレビを消す


「このご時世に反乱か.......」


そう呟き、部屋を整理し始めた


そして部屋を出て、居住ブロックを歩いていると、マリウスと出会う


「少佐、今回は我々の出る幕はなさそうですね。」


マリウスが話しかけると、


「ああ、そうだな。安心して新型が届くのを、首を長くして待っているよ。」


呆れた声でこぼした


「グライフですか.....まだかかりそうですね。」


彼の返答に、


「シーウルフは私の性に合わなくてね。」


と話していると、視線に気付いたのか、


「彼女、君に用があるんじゃないか。」


少佐はマリウスの後ろに視線を遣る


振り向くと、そこにはイルゼ少尉が気遣わしげにこちらを見ていた


「そうみたいですね。」


気づいた彼は少尉の元へ行き、


「......今回は、出番はなさそうですね。」


言葉選びに少し迷ったものの、結局先と同じような言葉をかけてしまう


「ですね......。しかし万一に備えて、艦隊と合流、月面で補給を受けて待機するらしいです。クルーは半舷上陸できるみたいですけど........」


その言葉に彼女は、そう述べて、密かに拳を握りしめ、


「なので........」


「よかったら食事にでも行きませんか.....?」


と彼女ははにかみながら告げた


「.....いいですよ。行きましょう。」


マリウスは驚いた、というより、純粋な嬉しさがこみあげていた


「本当ですか!?ありがとうございます!では、また今度!」


返事を受け取ると、彼女はそそくさと立ち去っていってしまった


その頬は、うっすら薄紅色に染まっていた


__________________


2495年、8月10日未明


火星、オリュンポス基地からは、サイクス少将率いる火星方面軍第4艦隊が、クレド鎮圧のため、ここを出発しようとしていた


しかし、ヴェルト軍司令部に飛び込んできたのは、衝撃の一報だった


「第4艦隊がクレドに寝返った!?」


その知らせを受け、宇宙機動打撃軍司令、トラウトマン大将は驚愕した


艦隊だけではなく、オリュンポス基地の所在するソモンターノ市自体がクレドの反乱に参加したのだ


-オリュンポス基地司令室-


「私とて、グリム中佐の友人として、そして火星の民として、彼の意思をなおざりにはできんからね......彼とはかなり長い付き合いだ。この話を私に持ちかけておいてくれたおかげで、彼の死後も、迅速に行動に移せた.......」


椅子に腰を掛けたサイクス少将が語る


「お力添え感謝いたします。少将。」


その言葉に、コリィは深く礼をする


「礼には及ばんよ。大尉。我々のように、政府の火星政策に不満を持つ軍人は多い。ここの政治家や資本家どもは金に踊らされ、市民のことなど眼中にないようだがな。」


少将が続ける


「他基地にも応援要請を送る。火星方面軍の半分でも味方につけられれば、この戦、勝機が見えるぞ。」


その声には、確かな期待が込められていた


しかしコリィが見ていたのは、希望的観測より現実であった


徹底抗戦を宣言した現在、クレド側は防衛戦となる


補給と戦力の問題から粘って1ヶ月、本格的に艦隊が動き出す前に、こちらの要求を呑ませるほどの戦果と、力を誇示しなければならない


そしてどのみち生き残ったとして、普通の軍人に戻れはしない

たとえこの作戦が成功し、政府が火星政策を改めたとしても、手のひらを返されない保証はない

彼らには後がなかった。

そう、火星の民がヴェルトから独立するという選択以外では、事実上この作戦目標を達成することはできない


しかし、サイクス少将とて無策ではなかった


「しかし仮に、我々だけで鎮圧部隊と戦闘を行う事になったとて、こちらには核がある。」


その言葉に,コリィは目を見開いた


「この基地の最深部には、励起型水素爆弾が保管されている。都市一つぐらい、簡単に吹き飛ばせる威力のな。」


グリム中佐の計画、プランBにはこうあった

仮にオリュンポス基地が作戦に加わった場合、我が方は核ミサイルを手に入れ、それを交渉材料に政府に脅迫を行えるだろう、と


クレドの作戦が、大きく動き始めていた

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