第7話

「戻ってきたか、火星に」


火星大気圏内、戦艦アステルトの艦内デッキからコリィ大尉は、自らが生まれ、育った大地を見下ろしていた


「大尉、イシス基地上空まであと20分です。準備を。」


若い士官の男に呼ばれ、コリィはハンガーへと向かった


ゴンドラを用いてG3に乗り込み、酸素マスクを装着、機体を起動する


そして基地上空、


『カタパルトデッキ、シャッター解放!グッドラック!』


管制官のアナウンスの後、シャッターが解放され、火星の強風がフライトデッキ内に流れ込む


G3と2機のゼクト改は機体を前進させ、


『降下シークエンスを開始、スラスターを自動制御モードに切り替えます』


AIの音声がコクピットに鳴り響き、降下シークエンスを開始する


そして火星の重力下、月面とは操縦の勝手が違うが、コリィはこの感覚で、「帰ってきたのだな」と再び実感したのだった


3機はスラスターを吹かして減速しつつ、解放されたゲートを通り、基地内ハンガーへと着陸した


コリィ大尉達は駐機場で機体を停止させ、コクピットを降りていく


大尉の目線の先、デッキではグリム中佐がこちらに敬礼をしていた


それを見たコリィ達は敬礼を返し、中佐のもとへ向かった


「大変な任務ご苦労であった、大尉」


中佐が彼らを労う言葉をかける


その言葉に大尉達は姿勢を正し、


「はっ!機体を受領、こちらには損害なし、任務完遂を報告します。」


とコリィが上申した


中佐は部下達の背中を叩き、


「今日は思う存分休みたまえ。」


と温かい声をかけた


__________


日が沈み、冷たい空気が漂う夜がやってきた

兵舎内の暖房でさえ、夜の冷たさと虚しさは掻き消せない


『政府の火星政策の転換の、街の人の反応は_______』


コリィが自室のベッドに座り込んでいると、テレビから流れてきた街頭インタビューが目に入る


『いいと思いますよ。そのおかげで経済が活性化し、不況が改善されるでしょう。』


初老のサラリーマンと思わしき男が答える


『私は賛成です。そのおかげで、コロニーの税金が下がって、いまの苦しい生活も改善されると思います。』


画面が切り替わり、若い会社員の女性が質問に答えていた


『うーん.....ほんとに改善されるんですかねぇ.....この国の人口の1割程度でしょ。火星。その予算を削ったところでねぇ........』


そして映った中年の男は懐疑的な見方をしていた


『_______と、さまざまな意見が.......』


コリィはテレビのリモコンを取り、電源を切ると、ベッドに寝そべって呟いた


「この絶対的多数決の政治を、覆す方法.........」


軍人であるならば、たとえどんな人間であろうと国民は守らなければならない

そう肝に銘じてきたはずだ

だが、インタビューに答えるコロニー市民の顔さえ今は、やけに腹立たしかった


軍人としての職務、愛国心


いや、彼にとっての愛国心というものは郷土愛でもあった

地球から旅立ち、過酷な環境で開拓を進め、生活の基盤を作った火星の開拓者たちへの尊敬、そして自分が住む街が好きだという想い

それらはすでに、軍人にとって絶対的存在とも言える国家を上回っていた、いや、昔からそうだった


彼は気がついていた


民のために、国家に引き金を引く覚悟


それはとうにできていた


私たちは、他の何者でもない、火星の民なのだから


そんな意識が、火星の人々に根生え始めていた


火星植民

西暦23世紀から本格的に開始された

初期は国家規模での開発が行われていたが、テラフォーミングにかかる予算や規模、政府の支出削減などが要因で一度中止されたが、居住可能な地下都市などがすでに建設されていたたほか、鉱山の開発は続いていたため、多くの低所得の下級労働者が出稼ぎに来ていた

というのは名目で、実際は各国政府が、国家のコンパクト化を推し進める中、余剰人口を宇宙へ送っただけの棄民政策であった

事実、火星開拓民は下層の労働者のみならず、中流階級などの中間層の人間も多かった

しかし彼らもまた、火星の厳しい環境での適応を強いられるのだった

そして時は流れ、現在でも火星は下級労働者や犯罪者の流刑の地という偏見はなくなっていない


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