第6話

一行は、月面を離脱し、オリュンポス基地所属の宇宙戦艦アステルトと合流、ハンガーに収容されていた。


機械の駆動音と整備員の声が飛び交い、照明で照らし出される明るいハンガー内、異様な雰囲気を放つ機体がいた


「あの機体は?」


それに見入っていたカーク軍曹が、整備員の一人に声をかける


「さぁ?あそこにいるパイロットに聞いたら何か分かるんじゃないですかね。」


関心を示さない態度で、彼は答えた


作業を見守る黒髪のその男は、修羅場を何度も潜り抜けてきた、というよりは、戦場での生き残り方を知っているベテランのように軍曹の目には映った


しかしその雰囲気に少し威圧され、声をかけるのに躊躇いを感じてもいた


「カーク、何してんだ?」


金髪に丸メガネの下士官、エドワード軍曹がフランクに話しかける


「いや、何でも」


その質問に、つい視線を逸らすが


「なんでもって顔してないぞ。」


その不満足そうな顔からエドワードに看破される


カークはため息をついて、


「......あの機体が気になるんだよ。わかるだろ、あの感じ。あれはたぶん現行の区分でカテゴライズできない、新世代機だ。なにより、あの顔。」


と自分の知見を述べた


その声からは微かな興奮が隠せなかった


それにエドワードは、


「ああ、あの悪そうなツラか。」


と口にして機体を見上げる


鋭いツインカメラに、刃物のようにエッジのある頭部アンテナ、顔の武骨な装甲、それに反してスマートで洗練されたボディ

まさに「悪役」のような見た目だった


「アグレッサー、ってわけでもなさそうだしな。って.....」


隣を見るとすでにパイロットの男の所へと行っていた


面識のない上官というだけでも緊張するのに、あの機体のパイロットときた

そしてこの雰囲気

そんなことは頭の中になかった

そこにあるのは、ただ機体を追いかける少年のような心だった


カークはパイロットスーツの襟章に一瞬視線を向ける


「大尉殿、お時間宜しいでしょうか」


そのまま上官の彼へと声をかける


「ああ、大丈夫だよ。何か?」


その温厚な声に、少しの安心感と、頼もしさを覚えたカークはコリィに問う


「あの機体は.......」


コリィは機体を見ながら、


「新型だよ。重武装、高火力。今までのものと一線を画している。名は______」


「センチネルG3」


荘厳的な声を纏って、その質問に返答した


「センチネル......」


カークが呟く


番人の名を持つ、その機体が背負う新たな運命


しかしそれを見つめる彼の瞳はただ、少年の頃のように輝いていた


「ありがとうございます。わざわざお時間を...」


少し経って、カークは深くお辞儀をして礼を言う


「いや、礼には及ばないことだよ。」


そんな彼にコリィは、変わらず温厚な声で返す


カークはもう一度深くお辞儀をして、立ち去っていった


そしてハンガーのデッキ上、カークは一人思い返す

AMSパイロットを夢見ていたあの頃を


コスモ戦争後、AMSは戦場の花形となった

戦勝国ヴェルトでは、パイロットを志す者は後を絶えず、次の連合との全面戦争に備え、軍縮も行われていなかったため、枠も多く取られていた

しかし、彼はそこで、身体的要因によって不採用とされたのだ

Head mount display の長時間使用による視力の悪化である

人類は500年経とうとも、視力の退化を克服できなかった、いや、克服の手段を手に入れられるものと、手に入れられないものがいた

医療技術がいくら発展しようとも、対価を支払う能力を持たない者は治療を受けられない

金と経済のシステムは6世紀前から全く進化していなかったのだ

燻り続けるその未練は、AMSに向ける情熱と共に彼の心に在った


-戦艦ギャラルホルン-


第3小隊の帰投後司令室では戦闘の余熱が残っていた。


少佐は艦長に呼び出され、宇宙起動打撃軍司令、トラウトマン大将へのテレビ電話による報告を行なっていた


『それで、第3小隊のドワッゼⅡ3機が敵の新型機3機と交戦、敵は損害なし、こちらは撃墜一機、中破1機か。しかしそれだけ、敵の新型は強力であったということ。我が方も対策を急がねば。』


大将の言葉に少佐は、


「新型のうち、二つ目のパイロットはかなりの手練でした。初見殺しのギミックもありましたが、機体性能だけではないようです。」


と報告を続ける


それを聞いた大将は、


『GSA-09D グライフの引き渡しにはまだ時間がかかる。それまでの即応案として、パンテオン研究所のシーウルフをそちらに実戦配備しよう。では、幸運を祈る。』


と告げて敬礼し、それに呼応し少佐と艦長も行い、彼は通話を終了した


ASW-15 シーウルフ


パンテオン研究所で試験が行われていた新型機。対艦・対AMSの双方をこなす次世代型火力支援機として開発された。

腕がビーム砲となっているが、その下に通常の腕が存在し、他機体の兵装の使用や格闘戦も可能

ビーム砲の操作や操縦に癖が有り、慣れが必要との評価をテストパイロットから下されている。


全長20.6m

重量52.6t

出力3020kw


武装

両腕部4連装ビームキャノン

ビーム・セイバー

頭部40mmバルカン砲4門

シールド

(ハードポイント×2)


少佐が司令室から出ると、そこにはマリウスが待っていた。


「殉職した、ガリワの遺品整理は、終わりました。」


「そうか......ご苦労。」


重さと温かみの双方を含んだ声で、少佐は部下を労った。


「配属されて3ヶ月で、こんなことになるとは.......」


そのマリウスの言葉に、少佐はただ制帽を深く被り、その場から立ち去った


コリィとオットー、二人は避けられない運命に呑まれつつあることを、どこかで察しているかのようだった


彼らが再び刃を交える時は、そう遠くはないだろう___________

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