第3話
AMS、Armored mobile system
無人月面作業用ロボットから発展した人型兵器である
搭乗者は搭載されている自律型AIの支援を受けつつ、戦闘を行う
兵器としては新しいカテゴリであり、コスモ戦争で初めて本格的な実戦投入が行われた
その重量と接地圧の高さから、地上での運用は大きく制限されていた。
そのため、歩行による移動は限定され、脚部から展開したタイヤによって、ローラースケートのように移動する方法が主流であった
しかし、それまでの常識を覆す新型機が戦場へと姿を現した
______WAS-08ドワッセン
ヴェルト軍の開発したAMS。
地上戦用にホバークラフトの原理を活用し、ホバー移動を可能としたこの機体は、陸上のみならず、水上でも一定時間の運用が可能であった
この機体は、ドイツ国境、オーデル川で膠着していた戦線を突破し、ベルリンまでの道を切り開いたコスモ戦争勝利の立役者なのだ
「懐かしいな。もう6年になるのか。」
艦内消灯時間、戦艦ギャラルホルンの宇宙の静寂と電子音の漂うデッキで、長身の男が呟いた
「そうだな、少佐。君とは、マーレ会戦で知り合ったんだったな。」
大佐の階級章を纏った、艦長の男が続ける
「あの戦争から6年で、戦勝国であるこの国も、ずいぶんな低迷してるもんだ。おふくろも物価が上がって、家計に余裕がないってよ。」
ため息をつくように少佐は言った
「退役して、上院議員選にでも立候補したら当選するんじゃないか?君はコスモ戦争の撃墜王なのだからな。」
「オットー・ギーガー少佐」
オットー・ギーガー。
軍内5位の撃墜スコアを誇る、コスモ戦争の英雄
AMSの運用が制限される地上での攻撃戦においても多大なる戦果を上げ、鉄血十字勲章、1級戦功十字章など多くの勲章を授与された。
不利な状況においても戦果を上げ、必ず帰還するため、鬼神などと呼ばれている
そんな英雄の目は、政治でも、国家を案ずるわけでもなく、ただ目の前に広がる広大な宇宙を捉えていた
少しの沈黙がその場に漂った後、
「本題に入ろう。我が部隊に新型機配備の話が来ている。それを君に任せたい。」
艦長が切り出す
「受領は1カ月ほど後になるだろうがな。これをみてくれ。」
少佐が受け取った資料を開くと、
そこにはまさに、新世代機ともいえるスペックが記されていた
GSA-09D グライフ
全長20.8m
重量55t
武装
Gew91G重粒子ライフル
腹部拡散重粒子砲
汎用武装コンテナ×2
大型ビームセイバー......
現在、コスモ戦争で投入されたヴェルトのエデル、連合のファランクスなどの初期のAMSを、第1世代にカテゴライズされている
そして大気圏下で実用可能な重粒子砲、衝撃吸収性能の高い新型シート、2つのメイン武装を同時に装備可能であること、基本戦闘重量が58t以下であることが、現在の主流である第二世代機の条件であるとされる
ヴェルト軍では、第十二次印パ戦争に投入されたドワッセンⅡや、その宇宙戦仕様、ドワッゼⅡなどがこれに分類される
それらとは異なる、全く新しい機体
内蔵型の重粒子砲に、大型化した機体、背部の大型武装コンテナ、推力の大きい新型スラスターの搭載......
現在の2世代機とは一線を画す仕様であった
「これは.....まさに新鋭機ですな。」
新世代の誕生を目の前に、オットーは興奮と驚愕を含んだ声で口にした
「ああ。私も驚いたよ。」
「しかし.....月面での連合軍の動きが活発になっている。場合によっては、受領前に出動命令が出されるなんてこともあるだろう。」
その艦長の重みを含んだ声に、
「気を引き締めていかなければ。部下たちにもしっかり伝えておきます。」
その職業軍人らしい上官への返答には、硬質さの中に、優しさと憂いが含まれていたことを、本人さえ自覚していなかった
そして彼は、踵をそろえて敬礼をし、デッキから立ち去っていった
「上官にも歯に衣着せぬ物言い、か.......」
艦長はそう呟いてふっと笑った
その言葉は、二人に戦場からの信頼というものがあることを、示しているようだった
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