金か銀か

「ねぇ知ってる? あの池のウワサ」


 昼休みぼっちのボク、女子二人の会話に耳を傾ける。

 ほほう……教室からも見える、あの池のことですな。


「深夜にそこへ斧を落とすとね、女の人が出てきてこう聞いてくるんだって。『あなたが落としたのは、金の斧? それとも銀の斧?』って」

「えーなにそれ。って私、なんかそれ聞いたことあるかも」


 聞いたことがあるって、当たり前。幼い時に一度は読む、あの童話そっくりじゃないか。


 ……って、じゃあその童話通り正直者でいたら……


 それに気づいた途端、ボクは思いっきり立ち上がった。金欠にとって、あまりにも朗報だったから。


 ウワサ話を信じるのもどうかと一瞬思ったが、どうでもいい。

 この時代、金や銀を売れば何円稼げるだろう。


 ……その金で、推しグッズを何個貢げるだろうか?


「フフフッ……!」


 ありがとよ、女子諸君! 嬉しさを我慢してたからか、その日は夜が来るまでが長く感じた。


――――――――――


 そして深夜。……よいしょ!


――ドボン……


「さてと、女神さま出てこ〜い」


 家にあったボロボロの斧を奪い脱出し、昼に聞いた通り、それを池に放り投げた。

 すると、近くにあった小屋から、ガラガラと音がして……


「あなたが落としたのは、金の斧? それとも銀の斧?」


 女神さまは現れたのだった。


 予想とは違った登場だったが、あまりにも美しいその容姿に、思わず目をそらす。


 ……そうだ。この質問、ちゃんと答えないと。


「い、いえ。ボボ、ボクが落としたのは……えーと、フツーの斧です」

「あらそう。あなたは正直者ね」


 しどろもどろに答えてしまったが、彼女は笑顔で聞いてくれた。


 ちゃんと言えた! これでグッズ分のかねが手に入r……



――バンッ!


 突然、激しい痛みがボクを襲う。 腹が……腹が赤く染まっていく。


 見上げた先には、女神さまが……女がピストルから出た煙をフッと消していた。


「あ……あっ。なんで……正直に、言った……の、に」

「そんなゴミ、ウチの池に捨てんな! 金銀以外はかねにならねぇんだよ!」


 え……?


――バンッ! バンッ、バンッ!



 その音を最期に、単純だが思ったことがあった。

 ボクも女も「金」によって行動が変わるんだなぁって。


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