第6話 ラセツ
「これが"魔神器"……。はじめて扱うのに、手に馴染む……」
"黒麒麟"を眺めながら呟く。
「これだけの力があるなら、ヒナ達を助けられる……。ダルシアンにだって勝てる……!」
かつてない力に気が大きくなり、自信に溢れていた。
「まだまだ甘いぞ」
背後からの声に驚き、慌てて振り向く。先ほどまで姿が見えなかったが、そこにはボロボロの甲冑を身に、鬼の面を着けた男がいた。
「出てくるのが遅かったね、お仲間はおねんねしてるよ!」
先手必勝。ミツキは喋りきる前に攻撃を仕掛ける。しかし男も刀を抜き攻撃を受け流す。
「えっ……!? "黒麒麟"!?」
男はミツキと同じ"黒麒麟"を扱っていた。同じ"魔神器"は存在しないはず。なぜ彼は持っているのか。
「愚か者め。敵を見極めよ」
男は"黒麒麟"を鞘に収めながら低い声で発する。
「……傭兵の仲間じゃないの?」
「わしは……わしはラセツ。"黒麒麟"に宿りし者、ラセツだ」
「ラセツ……」
聞いたことがない名前だ。そもそも”黒麒麟”に宿りし者とは……。
……それにしてもラセツの声はどこか暖かい気持ちを覚える。
「いきなり攻撃してごめん。だけど、傭兵の仲間じゃないなら協力してほしい。私の大切な人たちを助けたいの」
「……」
ラセツは沈黙し、じっとミツキを見つめる。
「……"黒麒麟"を持つ者よ、一つ問う。 何故自らを危機に晒してまで、助けようとするのだ」
「……」
確かに命を落としてもおかしくない状況になっていた。それも二度もだ。このまま櫓へ行ってもまた危険な状況になるだろう……。しかしそれだけの危険を顧みず、助けに行く理由はある。
「ヒナとサクヤは、私にとって家族なんだ。家族を助けるためだったら、どんなことでもするよ」
「……ふっ、そうか」
男は少し笑い、顎に手を置く。
「戦うことしかできぬが、力になろう」
「! ありがとう、ラセツ……!」
ミツキは礼に頭を下げると、自分の鞘に何も収まっていないことに気がついた。
(そうだ、さっき折れちゃったんだ……)
大切な愛刀でもあり、竹林に刃物を置きっぱなしにするわけにはいかない。折れた刃を回収しようとする。
「ごめん、少し待っていてもらえる? 折れた刀を拾っていかないと」
「……うむ、これか?」
ラセツはすでに拾っていた様子で、刃先と折れた刀を渡してくる。
「あっ、ありがと──」
ミツキは刀を見つめると固まってしまった。刀は鏡のように磨きあげられているため、反射で自分の姿が見える。
赤い瞳になっている自分がはっきりと見える。
"魔神器"を使用した際に堕天使の力が解放されていることは自覚していたが、実際に"血の目"になっていることを目の当たりにすると、胸に穴が空いたような気持ちになった。
茫然としているミツキを見つめると、ラセツは折れた刀に目を移し、口を開いた。
「……いい刀だ」
「えっ……?」
「手に取れば分かる。よく使われていたのだな」
「……それでも、手入れを怠って折っちゃったんだよ? 剣士失格だよ」
「結果はそうやもしれんが、この刀と過ごした月日は長かったであろう。そう悲観するな」
「……」
不思議な人だ。"黒麒麟"に宿る者などと怪しい男かと思ったら、励ましてくれるなんて。
刀を受け取り、じっと刀身を見つめる。赤く染まった瞳は恐ろしいが、それよりも大切なことを為さねば。
「うん、ありがとう。それじゃあ行こうか、櫓へ」
折れた刀を腰の鞘に納め、ミツキとラセツは竹林を進む。
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