第三話 誤解

 どれくらい意識を飛ばしていたのだろうか?


 あまり長い時間ではないのは確かだ。


 俺を覚醒させたのは、業火の如く燃え盛る太陽光の熱さに、瞼が耐えられなかったらだ。


 「あっちい! いったあい!」


 声を張り上げ、遮光ゴーグルを装着する。砂と泥の染みでうす暗くなる視界に安堵する。そして、生還の歓喜で笑いを漏らす。


 生きてる! はは!


 周囲を見渡すと、砂上帆船サンドヨットから、地上人達が降りて、何かを囲んでいる。


 コブワームかな? いや! そうだ! ロビンは!


 まだ、微睡を要求する意識を叩き起こすため、もう一度、真っ青な空で燃え続ける太陽を、一瞬直視する。


 体の芯まで焦がす激痛と、白く染まる視界に、微睡が上書きされる。今すべきことは、就寝ではないのだ。


 痛む手足を、ふらつかせ集団に近づいた。


 皆、俺には気にも留めず、コブワームの死骸も回収せず、何かを取り囲んでいた。


「コンニチワ! 、ナサマ! ハジメマシテデ、ネ!」


 ああ、この声ロビンだ!


 ロビンの挨拶に、皆がざわつき、ロビンを中心に取り囲んだ円が一気に広がる。そして、怯えた目で叫び出した。


「こいつぁ! 鉄人兵士だ!」


「旧戦争時代の奴か! おらの爺様もコイツにやられた!」


「間違いない! 清流人スイマ―共の武器だ!」


 俺は、ロビンが清流人スイマ―の武器ということより、その姿に驚愕した。


 ロビンは一言で言うと四角だ。文字通り箱の体にロ―プのような腕に、五本指の手。同じくロ―プのような脚に、四角い靴がある。


 首は無く、胴体よりも小さい、俺達と同じくらいの四角い頭がくるくる回っていた!


 ロビンは四角い頭についている、瞼のない不思議な丸い目を光らせる。


「イイエ! ワタシ! オモチャノロビン! グンヨウデハアリマセン!」


「嘘だ! あの! 爆発はなんだぁ!」


「そうだ! そうだ! 親方! アンカ―で撃ちぬくべ!」

 

 駄目だ! ロビンは悪い奴じゃない! 絶対に皆が思うような清流人スイマ―の武器ではないんだ!


 俺は皆の中に割って入って、ロビンを抱きかかえる。


 そして、周りの怒声に負けない声を絞り出す!


「皆! 落ち着いてください! ロビンは! 俺をコブワ―ムから助けてくれました! いい奴です!」


「う、うるせぇ! 餌モグラのフォースはすっこんでろ!」


「んだ! んだ!」


 分からずやの地上人達が、言葉と一緒に砂を投げつけてくる。砂が口に入っても俺は叫ぶのを止めない。


「ロビ、ン! は俺達の、敵、では! ないでえす!」


 鉄の味の液体を、口から思いと一緒にまき散らす!


 地上人はなんで分かってくれないんだ! ロビンが武器なら! 敵なら! 皆、もう攻撃されてるはずだ! ロビンは、頭をただ、回転させて挨拶しているだけだ! 

 

 砂を投げつけるお前達よりも、ずっと友好的だ!


 そんなに、自分達と違う特徴を持つものが怖いのか!


!」


 全ての怒りも、思いも吹き飛ばす一喝で皆が手を止める。


 この声、怒気、間違いない!


「お、親方!」


「親方!」

  

 アズホ―親方だ! 助かった。


「お前たちは、コブワ―ムの回収してろ。折角の肉が渇くだろうが」


「お、親方! だけど!」


 抗議の声を上げた一人は、親方の鉄拳で、砂丘の中に消えていった。恐るべし、


 俺は、飲み込んだ砂を吐き、アズホ―親方に叫ぶ。


「アズホ―親方! 聞いてください! コイツは、ロビンは! 俺を助けてくれたんです! さっきの爆発は攻撃じゃなくて、ロビンが俺のために!」


 アズホ―親方は大きい手で俺の言葉を遮る。その手には、優しさが感じられた。ああ、これで大丈夫だ。


 俺は、ロビンから身を離す。


 親方はロビンに視線を合わせる。まずはロビンが挨拶をした。


「コンニチワ! ハジメマシテ! ワタシハロビンデ!」


「ああ、俺はアズホ―だ。よろしくな」


 ああ! 流石! 親方だ!


「ヨロシクデ! ア、ホ―サン!」


 ああ! お前はも駄目なのか!


 親方の怒りを買ってしまった、俺とロビンは捕縛されて、街に連行されてしまった……

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