第一話 第四の種族

「く、くしゃい」


 俺はあまりの腐臭に文句を零す。


 ゴ―グルを首に下げ、現在の状況を確認する。真っ黒い暗闇が、振動と砂のざらつく音を響かせるだけで何も見えない。

 

 神経を集中し、音の反射と、とっても嫌だが、臭いの情報を頭で、思考視覚化し組み立てる。


 粘つく赤黒い四方八方、しつこいくらいの腐臭、そして、この圧迫感と体全体に伝わる振動。


 ああ、これは、確実にコブワ―ムの体内ですね。間違いない。


「さて、地上人なら、じーっくりと水分を絞られてここでお陀仏だが、俺達、潜伏人モグラニアンならば――――」


 手足の爪を立てずに、圧迫感に逆らわず、先へ先へ体をよじる。


 コブワ―ムは、獲物を直ぐに殺さず、体内にストックしておくのが捕食の特徴だ。まぁ、潜伏人モグラニアンには、土よりも緩いこの圧迫は苦ではないけどな。


 俺が、先に進むわけは一つ。


 だ。


 コブワ―ムの消化時間は、約二日で大人一人を消化する。ただ、その間に筋肉やら、色々生きるのに必要な器官も解かされるから、持って一日あるかないかだろう。


 そこは、さほど問題ではない。駄目なのは、ここで、焦って体内を切り裂いて出ようとか、近道を考えると、強酸で溶かされ、俺でもお陀仏。


 問題は、ぐえ!


 コブワ―ムが筋肉運動を急激に開始し、右へ、左へ、くねりだす。


 今、地上ではこの、コブワ―ム狩りを地上人のボンクラが絶賛実施中だ。あの太い鉄のアンカーが俺ごと貫いたら……


 考えたくもない結末が、俺を先に進ませる。


 こういう時こそ、冷静に、コイツの体内の排泄門から地中にすれば万事解決! この調子ならあと、四、五分ほどで……


 予想外なことは続くものだ。


 俺の前には何か、固形物が先を塞ぐ。


 周りの振動で、情報を脳内で視覚化する。なんだこれ、人の形をしているということは分かる。


 と、いうことは、俺と同じように脱出を目指す潜伏人モグラニアン? 

 

 いや、コイツの指の爪は地上人みたいに五本の小さな楕円形だ。


 けれども、地上人ではない。地上人の骨格ではこの体内の圧力に耐えきれないからな。


 噂に聞く、清流人スイマ―か? 

 

 いいや、違うだろうな。話では彼らの肌は、透き通るような白色と聞く。


 コイツの肌は、赤茶色の染みまみれだ。


 いや、この肌は生物の硬さじゃない! 鉄のだ。


 

 再び襲う、急激な筋肉の収縮運動!


 ぐえ! いた、鼻をコイツにぶつけた!


 鼻がを押した感触があった。


 暗闇を照らすト―チマッシュル―ムのような黄緑色の光と、抑揚のない不自然な声が、俺の知らないの目覚めを告げる。




「コンバンワ! ゴキゲンヨロシイデ、カ?」

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