来訪
ーーもしかして、助かる?
ベッドに一人寝そべりながら眠る事も出来ず今日を終えようとしていた。
イワイオニを実行してから拓斗、幹久が順番に死んだ。
間違いなく次は僕だ。死ぬとすれば今日だ。でも今日はもうすぐ終わる。今日が終われば助かる。何の確証もないがきっとそうだ。
今日一日気が気じゃなかった。外に出れば、康秀に会えば間違いなく殺される。
初めて仮病を使って一日休んで家から出なかった。それだけでも死ぬ可能性はかなり下げられるはずだと思った。
うまくいったのか僕はまだ生きている。だがまだ油断は出来ない。今日が終わるまで後三時間もある。何が起こるかは分からない。
「無事に終わるわけないだろ」
頭上から康秀の声がした。慌てて飛び起きると枕元に紛れもなく康秀がそこに立っていた。
「康秀……」
康秀はにやにやと笑っていた。音もなく部屋の中に現れた。これが夢じゃなければあまりにも非現実でもはや怪異だ。
「お前が、殺したのか……?」
「お前って誰に向かって口聞いてんだよ」
康秀が表情を消した瞬間、一気に死の気配が増した。
ーー殺される。終わりだ。
全身が震えて止まらなくなった。
これから僕はどうなる。何をされる。こいつは一体何なんだ。
こいつは康秀じゃない。かくれんぼの翌日から纏う空気が違っていた。
だが、とすればこいつは何者なのか。
僕達は康秀の死を願った。しかし康秀は死なず翌日普通に現れた。
康秀は死んでいない。だが目の前にいる康秀はきっと康秀ではない。
「お前、誰だ?」
康秀が声を上げて笑った。これだけ部屋で大声を上げれば家族が気付いてもおかしくないはずだ。だが誰も来ない。誰も助けには来てくれない。
「俺は康秀だよ。ずっと」
康秀がすっと一歩こちらに近づく。一歩、また一歩。
まずい。このままでは本当に殺される。
ーーどうしたらいい。
“だよなー。まあ来てくれたらラッキーって感じで”
ふいに拓斗の言葉が頭を過った。
このまま無抵抗で終わるなら賭けるしかない。普通じゃない存在ならそれに対抗出来る存在を呼ぶしかない。
「おめでとうございます。どうか鬼様おいでください。あなたと私の望むものを取り替えましょう」
こんなバカげた呪文を本気で唱える羽目になるとは思わなかった。だが今僕は本気で心の底から鬼を頼った。
ーー助けてくれ。代わりになんでもくれてやる。
康秀が歩みを止めた。
鬼は、来てくれるのだろうか。
「……くはは。はははははは」
康秀がまた笑う。大声を上げて笑う。
鬼は現れない。鬼は来ない。無力で無抵抗な僕をどこかで笑っているのだろうか。
「呼ばれなくてもいるよ。ここに」
とんとんと康秀は自分の胸を突いた。
「来てやったぞ、鬼が」
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