親の心子知らず

「おい、康秀」


 酒という特に美味くもなく気分が悪くなるだけの飲み物を今日も胃に流し込む。だがこれが現実を眩ませ少しでも遠ざけることが出来る手軽で合法的な手段だった。


「おい、どうした?」


 息子との関係性はもはや無いにも等しかった。

 イタズラ好きで他人に迷惑をかけてばかりで手に負えない。強引にごまかし追い払っているが、平気で他の子供のおもちゃ等を盗んでいる事は、貧乏な自分では決して買い与えられない玩具が転がる部屋を見れば明らかだった。


 ーーどうしてこうなった。


 待望の息子だった。今は亡き嫁と涙を流して喜んだ命だった。なのに、生まれてきた息子は年々不出来で迷惑な生き物に育っていった。


「おい康ーー」

「黙れ」


 背を向けて振り返ることもしない息子から重く冷たい声がした。ゆっくりと康秀がこちらに顔を向ける。凍てついた無表情が俺を睨んだ。


「殺すぞ」


 そう言って邪悪な笑みを浮かべた。

 

 ーーあぁ、やはりこいつは……。


 薄々抱き続けた違和感が確信に変わりつつあった。

 ただ、数日前までの息子とは明らかに存在感が違っていた。

 確信と疑念が渦巻きながら息子からしばらく目を離せなかった。

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