継承
「父さんから聞いたんだけど、イワイオニっていうまじないがあるらしいんだ」
イワイオニ。祝う鬼と書いて祝鬼と言うそうだ。
「イワイオニは願いを叶える鬼なんだ。ただし、ダイショーが必要らしい」
「ダイショー?」
「そう。何かを得る為には何かを失うんだって」
「え、何それ怖いんだけど」
「康秀の父ちゃんいるだろ? あいつも昔イワイオニやったんだってさ。そのせいで貧乏らしいぜ」
「へー。でもその代わり何か欲しいものは手に入れたんでしょ?」
「多分な。それが何かは知らねぇけど」
「で、拓斗の父さんは何でそれを教えてくれたの?」
「康秀の事相談したんだよ、何とかならないのかって。そしたらダメ元だけど鬼を呼んでみたらいいって」
「何それ、大人としてどうなの。しかもダイショーがいるんでしょ?」
「お前らは既に康秀から色んなものを盗られてる。ダイショーは支払い済みだから大丈夫だって」
「屁理屈に聞こえるけど」
「何にしたってこのままじゃ康秀は野放しだ。ダメ元でやってみようぜ」
拓斗の父親の地域に伝わるイワイオニ。
正直気は進まなかったが、結局呼び出すのは拓斗自身がやるからダイショーを払うとしたら拓斗だけになる事、どうせ鬼なんて呼んでも来ないだろうという事で僕達はとりあえずイワイオニを実行した。
物置に入った康秀の姿をこっそり確認しながら僕達は笑いを堪えるのに必死だった。普段はナンバーロック式の南京錠がされているが、実は左端のダイヤルを一つ回すだけで開く事が出来るのを幹久が偶然発見した。康秀なら暗黙の了解で使用しない物置に平然と隠れるだろうと、わざと事前に鍵を外しておいたのだ。
「よし、じゃあ呼ぶぞ」
そう言って拓斗は目をつむり手を合わせ、イワイオニを呼び出した。
「おめでとうございます。どうか鬼様おいでください。あなたと私の望むものを取り替えましょう」
すっと目を開き、「よし、行こうぜ」と拓斗は笑った。僕達は康秀を置き去りにし、そそくさと公園を離れた。
「ほんとにこれだけ?」
幹久が僕と同じ疑問を拓斗に続けた。あまりに簡単であっけない儀式。こんなもので鬼が呼び出せるとは到底思えない簡易なものだった。
「そ。これだけ」
イワイオニの召喚はあっさりと完了した。
来るわけないと思いながらも、僕はずっと気になる事があった。
“あなたと私の望むものを取り替えましょう”
僕らは康秀の死を望んだ。
イワイオニは、何を望むんだろう。
拓斗の父親の話ではすでに僕らは代償を支払い済みと言った。
果たして本当にそうなのだろうか。
いずれにしても代償を払うのはイワイオニを呼び出した拓斗だ。
僕は関係ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます