自覚

 ーーおそい。


 もう三十分は経っただろうか。物置の中でじっと耐えているが一切鬼は探しに来ない。かくれんぼなのだから普通はそれで良いのだが、とはいえあまりにも音沙汰がなさすぎる。かくれんぼの範囲はこの公園内のみというルール。決して小さい公園ではないが、さすがにこれだけ時間があれば物置を怪しんでもいいはずだ。


 しかしそこから十分程経っても状況は変わらない。


 ーーおい、まさかこれって……。

 

“康秀、今日暇ならかくれんぼしない? 勝ったらお前の欲しいもの何でも一個やるよ”


 嫌な予感がした。向こうから俺を誘ってくるなんて珍しいなとは思ったが、欲しいもの何でも一個という言葉に思わず釣られた。

 だがこのかくれんぼ、そもそも目的は俺だったんじゃないだろうか。最初から俺を置き去りにする陰湿なイタズラ。もしそうだったとしたらーー。


 頭に一気に血がのぼる。

 許さない。絶対に殺してやる。俺は奴らの意図を確かめるために立ち上がった。


 がらがらがら。


「え?」


 その瞬間物置の扉が開く音がした。驚きのあまり間抜けな声を上げその場に硬直する。しかし扉は一ミリも開いていなかった。

 到底聞き間違いとは思えない音。それと共に自分しかいないはずの物置の中に異質な空気が入り込んだ。

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