召喚

「……くくくくっ」


 黙って歩いていた幹久が堪えきれず腰を折って声を漏らした。


「ぷっはははは!」


 それを皮切りに拓斗がとうとう声を上げて笑った。


「ちょっと聞こえるかもしれないだろ」


 慌てて僕は拓斗の口を押さえるが、拓斗は大丈夫大丈夫と僕の手を払った。確かに拓斗の言う通り既に公園からはかなり離れている。僕達の声が康秀に聞こえる事はおそらくないだろう。


「あいつ、いつまであの中いるんだろうな?」

「夜になるまでずっといたりして」

「そこまでバカじゃないだろ」

「でもあいつ何も知らずに今も一人でかくれんぼしてるんだぜ」


 拓斗の言葉に僕も幹久も思わず吹き出した。


「後はこれで、イワイオニに成敗してもらったら完璧なんだけどな」

「さすがにそれはないんじゃない?」

「だよなー。まあ来てくれたらラッキーって感じで」

「うんうん」


“イワイオニ呼んでみようぜ”


 康秀を置き去りにするだけで僕は正直十分だと思った。でも二人はそうじゃなかった。もちろんその気持ちは分かる。ただそれとイワイオニとはまた違う話じゃないだろうか。本当に康秀を懲らしめたければいくらでも現実的な方法はある。でもそれはしない。何故なら僕達は臆病だから。


「あいつ死なねーかな」


 少なくとも拓斗は本気でそう思ってる。でも自分ではできない。だからイワイオニに願いを託した。


 ーー来るわけないじゃん鬼なんて。


 内心思いながらも、拓斗達と願いは同じなので何も言わなかった。

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