かくれんぼ

 ーーラッキー。


 遊び慣れた広い公園の中、まさかここが使えるとは思わなかった。

 普段は気にも留めない物置。中に何が入っているのか興味すらないオブジェの扉を横に引くと普通に開いた。


 ーーここだ。ここなら絶対にバレない。


「もういいよー」


 公園内のどこかに潜んでいる鬼を除くメンバーの声が聞こえたが、自分は絶対に声を出さない。ルールだかマナーだか知らないが、わざわざ自分の居場所を知らせるなんてバカとしか思えない。ここで最後まで逃げ切ってやる。


 物置の中はバケツ、ほうきといった掃除道具らしきものがいくつか入っているだけだった。長年使われているであろうカビや鉄臭い臭いは苦痛だが、かくれんぼの時間を凌ぐ為

であれば小学生の子供一人が居座るには十分過ぎる空間だった。


 勝確だ。今までかくれんぼで物置を使ったやつを見たことはない。そもそも南京錠が掛けられていて使えないのが理由なのだが、今日はその南京錠がどこにいったのか取り払われている。これを使わない手はない。


 ーーバカな奴ら。


 修矢、拓斗、幹久。

 正直心の底では友達だなんてまるで思っていないが、つるんでおく事で得られるものがあるから関係性を保っているに過ぎない連中だ。こんなくだらない遊びに付き合ってるのもそういったチャンスにありつく為だ。


「バカみてぇ」


 誰にも届かない声で俺は小さく呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る