第7話 尻軽女

 世の中、顔が全てだと思い知った日。

それは、湿った曇りのあの合コンの日だ。

 3人の女と3人の男で構成されたその合コン。人数は一緒だけど、だいたいはみんな決まった1人を狙う。

 その1人になるであろう男がこの1番右にいる奴。

 ブルーの深い瞳。胸のはだけた純白のシャツに明るめの茶髪。太い唇。筋の張った高い鼻。

彼に見惚れない女はいないだろうと思った。

彼は1番に口を開いた。

「合コンってこういう感じなんだー。あ、ちわーっす。本間和哉です。27です。六本木に住んでまーす。」

結構チャラい感じだ。

続いて男性陣の自己紹介が済み、女性陣の番だ。2人に続き、私は最後に言った。

「ええと南波胡桃です。23歳です。私合コンとか初めてだし、彼氏もできたことないんですけど楽しみたいと思ってます。」

そう言うと和哉が口を開いた。

「へえ。経験なし?可愛いじゃん胡桃ちゃん。俺さ、元カノと別れたばっかなんだよねーフィリピン人の。可愛かったんだけどね。ていうかみんな経験豊富な人ばっかだと思ってたわ。」

 それを聞いて、少しでも彼の瞳にドギマギしてしまった自分を恥じた。

合コンの席で元カノの事を言う時点でアウトだったけれど、フィリピン人に惚れる男となると、彼の株はゼロに等しくなっていた。

 それから合コンは続いた。友人の梢子がガンガン和哉を口説いていた。 私は左に座っていた童顔の優しそうな男性といい感じになりつつあった。

 「すいませーん。ハイボール。」

和哉のオーダーを聞いて、ハイボール頼めばよかったなあと思った。このお店は店員さんがあんまり通らないのにベルもない。大好きなハイボールを頼もうと口をパクパクさせているうちに店員さんは去りかけている。

「あー追加でもう1つください。」

和哉はそう言った。私の様子に気付いたのだろう。私は信じられないくらい、すごくキュンとしてしまった。目の前の優しそうな男性とのどんな会話よりも嬉しかった。

 和哉は何事もないようにまた梢子と喋っている。

 きっとイケメンだから。イケメンだったらなんでもキュンとしてしまうんだろうなと思った。

 顔って本当に大事だ。目の前の童顔と和哉を比べると本当にそれを痛感した。

 ずっとイケメンには人間としての大切なものが欠けていると思っていた。和哉もその一人だと思っていた。今も思っていないわけではないけど、そのくくりに入れるのは和哉に少し申し訳ない気もした。

 そこから私はずっと和哉を見ていた。その筋張った白い手と意外にもガッチリした肩と血管がクッとなった腕とを交互に観察していた。

 私も、結局はイケメンにいってしまった。

 イケメンには絶対引っかからないとずっと思っていた。けれど、和哉が初彼氏なら、ちょっと良いかもなんて思ってしまう自分がいた。あとで連絡先交換してもらおうとも考えていた。


 顔がいいと、落ちるのなんかほんの一瞬だ。23の私は驚くくらいにチョロかった。

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